大阪プライム法律事務所

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国際司法裁判所と竹島問題

12.08.15 | 企業の法制度

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韓国の李明博大統領が、日本の中止要請を無視して竹島を訪問しました。日本政府は、対抗措置として竹島の領有権問題について、国際司法裁判所に提訴する手続きの検討に入ったとのことです。国際司法裁判所への提訴を含む国際法に基づく紛争の平和的解決のための措置を検討すると玄葉外相が述べています。国際司法裁判所とはどのような裁判所でしょうか。

(写真はハーグの国際司法裁判所)

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国際司法裁判所の紛争解決手続きには、他方当事国である韓国との合意が必要です。日本政府は、これまでにも1954年と62年に同裁判所への付託を提案しましたが、いずれも韓国政府からは拒否されています。

国際司法裁判所(International Court of Justice)(略称 ICJ)
常設された国際裁判所として初めてつくられたのは、第一次世界大戦後にできた「常設国際司法裁判所」でした。現在の「国際司法裁判所」(ICJ)は、第二次世界大戦後にこれを受け継ぎ、国連の主要な常設の国際司法機関として1945年に設立され、オランダのハーグに設置されました。

地域的な裁判所と異なり、全国連加盟国は自動的にICJ規程の当事国となる。また、国際法の特定の分野に特化した専門的な司法機関と異なり、ICJには国際法上のすべての問題を付託できる。ICJは、このような普遍的性格をもった唯一の国際司法機関です。

裁判所は、原則として常に開廷され、当事者たる国家から付託された国家間の紛争について、裁判を行い、判決・命令をする権限を持っています。一審のみで、上訴制度はありません。判決の意義・範囲に争いがある場は、当事国はその解釈を求めることができるようになっています。判決はその事件と当事国だけに拘束力をもちます。
国境や大陸棚などの境界線問題、亡命事件、内政干渉などの問題が付託され、出された判決はおおむね尊重されています。

また、国連総会および国連の専門機関が法的意見を要請した場合には、勧告的意見を出すことができます。

裁判官
裁判所は、国の代表でなく個人の資格で選ばれる15人の裁判官で構成されています。日本からは、1961 ~1970年に田中耕太郎氏が、1976~2003年に小田滋 氏が就任していて、2003年からは、あの皇太子妃の雅子さまのお父様である小和田恆氏が現職で、2009年から2012年2月まで裁判所長をしました。

当事者
当事者となれるのは、国家のみとされていて、個人や法人は訴訟資格を持ちません。国際連合加盟国は当然ながら当事国とされ、非加盟国も、安全保障理事会の勧告のもとで国連総会でなされる決議によって当事国となることができます。

裁判の開始要件
ICJにおける裁判は、原則として両当事国の同意による付託、もしくは、原告の訴えに対して被告が同意した場合に開始されます。つまり強制管轄権はありません。この点は、国家内における裁判の場合と異なっています。これは、国際社会に統一された権力機構が存在しておらず、各国が有する平等の主権への配慮からです。

ただし、国は、選択条項受諾宣言(規程36条2項)をなせば、国際司法裁判所での裁判への応訴を義務とすることができます。日本はこの選択条項受諾宣言をしていて、国際司法裁判所が扱う範囲の内容であれば、他国の訴えに応諾する義務を持っています。 

最近の状況
東西冷戦時代はあまり活用されなかったようですが、最近は国際法の各分野で司法的紛争解決が注目を集める傾向にあります。外務省によると、2012年8月現在、ICJには11件の紛争が付託されており、紛争当事国も世界の各地域にわたっているようです。国際社会における実効的な紛争解決機関としてのICJへの信頼が高まっているからだと思われます。

韓国はICJ付託を拒否
竹島領有権問題に関して、これまで日本政府は何度もICJに付託してはどうか韓国側に提案してきましたが、いずれも韓国側は拒否し続けてきています。
日本政府は、1954年と1962年に、韓国政府に対して、竹島問題をICJに付託することを提案しましたが、韓国側は拒否してきました。今回も、韓国政府は応じない意向を示しています。

ICJへの付託は、紛争当事国の一方が拒否すれば審判を行うことができないため、韓国政府が同意しない以上は、竹島紛争をICJで解決できません。
韓国は、日本が日露戦争中に独島を侵奪したという主張をしていますが、「奪った」という議論の前提条件として、竹島が一度でも韓国の領土であったことが証明される必要があります。しかし、韓国側からは、日本が竹島を実効的に支配し領有権を確立した以前に韓国が同島を実効的に支配していたことを示す明確な根拠は、未だに提示されていません。この点は、ICJにかかった場合は、重要な焦点になると思います。

韓国政府が今回も拒否する場合は、国際社会からは「自らの主張に正当性がないから受けないのだ」と受け止められるのでないでしょうか。昭和40年の日韓基本条約の交換公文では、竹島問題について両国間で解決できない場合は「調停によって解決を図る」とされたとのことです。これからしても、韓国政府は日本側提案を受け入れて、ICJで、堂々と国際法理のもとで解決を図るべきではないかと思います。

北方領土問題とICJ
北方領土問題についても、日本は1972年にソ連に対してICJへの付託を提案しましたが、ソ連側のグロムイコ外相によってこれを拒絶されています。

その他の問題とICJ
南極海における捕鯨問題を巡って、オーストラリアが2015年に日本を提訴して継続しています。日本にとっては、これがICJでの初めての当事国事件です。
オーストラリアとの間では、1950年代にも、ラフラ海での真珠貝漁業紛争で、日本からICJへの紛争の付託を提案し、オーストラリアもこれに同意し、付託合意書が準備されましたが、その間に紛争は当事者間交渉で解消終了したことがありました。  

 

 



 

 

 

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