大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

叙勲の法制度

12.11.18 | 企業の法制度

"

11月3日に、平成24年秋の叙勲者が発表され、桐花大綬章、旭日章及び瑞宝章など合わせて3,940名の方々が受章されました。叙勲は春にもあります。勲章制度は明治時代からありますが、戦後はいったん中止され、その後再開されましたが、平成15年には大きく改正されています。話題になることの多いものですが、意外に詳しいことは知られていません。
法的な制度の面から、眺めてみました。

 

"

"

写真は書籍「勲章と褒章」(佐藤正紀 (著) 時事画報社 (編集))

春秋叙勲
これは生存者に対する勲章の授与ですが、戦後は一時停止されていました。昭和38年に至って、閣議決定で再開され、現在に至るまで春と秋の年2回、春は4月29日付けで、秋は11月3日付けで発表されています。

候補者は、内閣総理大臣が決定した「春秋叙勲候補者推薦要綱」に基づき、各省各庁の長から推薦され、内閣府賞勲局が推薦候補者について審査を行い、原案を取りまとめ、その後、閣議に諮り、受章者が決定されています。

制度の現代化
2002年(平成14年)の小泉内閣での閣議決定に基づき、2003年(平成15年)に、新しい「勲章の授与基準」が決められ、栄典制度の大幅な見直しが図られました。

批判の強かった叙勲の官民格差が改革の対象となったほか、「勲3等」といったように数字で位を表す形式の勲等が廃止されました。つまり、それ以前は「勲○等に叙し旭日○○章を授ける」といった勲等と勲章を区別していましたが、「旭日○○章を授ける」というひょうげんになりました。

また、これまで男子のみが授与された旭日章が男女問わず授与されることになりました。(それまで女性だけに授与されていた「宝冠章」は皇族女子又は外国人女性への儀礼的な場合にのみ授与される特別な勲章とされました。)

叙勲制度についての功罪
功罪もよく取沙汰されます。功は、こういった賞があることで、世の中のために頑張ろうという人が一人でも増えることなのだろうと思います。罪の方は、いろいろと言われます。もっとも頷けるのは、人の評価を、国が(その実は官僚が)、細かく等級をつけて決めることが許されていいのか、でしょう。叙勲には、年齢とか経歴とかの必要条件が決められています。しかし、その中で誰をチョイスするかは極めて不透明で、恣意的でもあります。この辺で、官からみた公益評価が如実に出てきて選別がなされているように思います。官から見ていい人が、必ずしもベストなのか。市民が選ぶ叙勲があってもいいのではないでしょうか。

勲章の序列(カッコ内は旧制度の勲等)
1 大勲位菊花章頸飾(大勲位)
2 大勲位菊花大綬章(大勲)
3 桐花大綬章(勲一等)
4 旭日大綬章 瑞宝大綬章 宝冠大綬章 文化勲章(勲一等)
5 旭日重光章 瑞宝重光章 宝冠牡丹章(勲二等)
6 旭日中綬章 瑞宝中綬章 宝冠白蝶章(勲三等)
7 旭日小綬章 瑞宝小綬章 宝冠藤花章(勲四等)
8 旭日双光章 瑞宝双光章 宝冠杏葉章(勲五等)
9 旭日単光章 瑞宝単光章 宝冠波光章(勲六等)

受章者のうち、1から4の大勲位菊花章、桐花大綬章、旭日大綬章、瑞宝大綬章、宝冠大綬章及び文化勲章は、宮中で天皇陛下から親授されます。

5の旭日重光章及び瑞宝重光章の場合は、宮中で内閣総理大臣から伝達され、6以下の中綬章等の勲章並びに銀杯及び木杯にあっては、各府省大臣等から伝達されますが、いずれの場合も、受章者は勲章を着用し、配偶者同伴で天皇陛下に拝謁しています。 

法的な位置づけ
意外に思われるかもしれませんが、叙勲制度に関する「法律」というものは存在していません。実は、叙勲制度は、日本国憲法7条7号で、天皇の国事行為として定めた中の「栄典を授与すること」が根拠とされ、これをもとに政令(太政官布告、勅令)、内閣府令(太政官達、閣令)、内閣告示等によって運用されています。

この点の政府見解としては、憲法73条6号で「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること」として政令制定権を内閣の権限として定めているところ、内閣は「この憲法…の規定」である憲法7条7号の「栄典を授与すること」を実施するために政令を制定しており、この政令及び内閣府令等の法令に基づいて栄典制度を実施しているとしています。

また、現行の栄典関係の政令(太政官布告、勅令)・内閣府令(太政官達、閣令)等の法令の有効性ですが、この点の政府見解は、勲章制定ノ件(明治8年太政官布告第54号)や大勲位菊花大綬章及副章製式ノ件(明治10年太政官達第97号)など現行の栄典関係の法令は、憲法98条1項が定める「この憲法…の条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部」にあたらないため、日本国憲法施行後もなお効力を有しており、その後に政令等として適正な手続による改正も経ているため有効である、としています。 

旭日章と瑞宝章などの授与基準
この二つの章は併存し、またその中でもいくつかのランクに分けられています、どのような違いで運用されているのでしょうか。
こういったことについては、「勲章の授与基準」(平成15年5月20日閣議決定、最終改正平成18年12月26日)で決められています。 

旭日章は、「社会の様々な分野における功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた者を表彰する場合に授与する」ものとしています。そして、授与基準としては、功績内容の重要性及び影響の大きさ、その者の果たした責任の大きさ等について評価を行い、特に高く評価される功績を挙げた者に対しては旭日重光章以上、高く評価される功績を挙げた者に対しては旭日小綬章以上、その他の者に対しては旭日単光章以上とする。」としています。 

また、「内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長又は最高裁判所長官の職にあって顕著な功績を挙げた者」については授与する勲章の標準を旭日大綬章とし、「国務大臣、内閣官房副長官、副大臣、衆議院副議長、参議院副議長又は最高裁判所判事の職(これらに準ずる職を含む。)にあって顕著な功績を挙げた者」については旭日重光章を標準とすると定めています。実際の受章者には大企業の社長や労働組合の幹部なども授与される場合があります。 

瑞宝章は、「国及び地方公共団体の公務又は次の各号に掲げる公共的な業務に長年にわたり従事して功労を積み重ね、成績を挙げた者」とし、教育又は研究業務、社会福祉、医療又は保健指導、調停委員、保護司、民生委員など国又は地方公共団体から委嘱される業務、著しく危険性の高い業務、精神的・肉体的に著しく労苦の多い環境における業務などが掲げられています。
受章者には、中央省庁の事務次官、検事総長、特命全権大使、会計検査院長、主要大学の学長などを経験した方が多いようです。

文化勲章
我が国の文化の発達に関して顕著な功績のあった者に対して授与されます。文化審議会に置かれた文化功労者選考分科会委員全員の意見を聴いて文部科学大臣から推薦された者について、内閣府賞勲局が審査し、閣議に諮って決定されています。毎年11月3日の文化の日に、宮中において天皇陛下から親授されています。 

その他の叙勲
危険業務従事者叙勲(警察官、自衛官など著しく危険性の高い業務に精励した者)
高齢者叙勲(功労者に対して年齢88歳に達した機会に授与)
死亡叙勲(勲章の授与の対象となるべき者が死亡した場合に随時授与)
外国人叙勲(国賓等の来日や駐日外交官の離任に際して実施する)

褒章(ほうしょう)
褒章は、社会や公共の福祉、文化などに貢献した者を顕彰する日本の栄典の一つです。紅綬褒章、緑綬褒章、黄綬褒章、紫綬褒章、藍綬褒章、紺綬褒章の6種類があります。
(人命の救助に尽力した方への紅綬褒章、社会奉仕活動に顕著な実績者を対象とする緑綬褒章、その道一筋に業務に精励した方への黄綬褒章、学術・芸術・技術開発等の功労者への紫綬褒章、教育・医療・社会福祉・産業振興等の分野で公衆の利益を興した者や保護司、民生・児童委員、調停委員等への藍綬褒章、公益のために私財(500万円以上)を寄附した者を対象とする紺綬褒章)

"

TOPへ