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非嫡出子相続分に関して最高裁大法廷判決へ

13.07.15 | 企業の法制度

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この7月10日、非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1とする民法規定の合憲性が争われている事件で、最高裁判所は大法廷で弁論を開きました。9月にも大法廷判決が予定されていますが、非嫡出子の相続分2分の1規定が不合理な差別で憲法違反となる可能性が極めて高いと予想されます。

この問題は、かつて最高裁は合憲と判断したものの、民法学会や国会で長年にわたって激論がされてきたものですが、いまや違憲性が明白であると思っていた立場からすると、ようやく最高裁が判断変更の重い腰を上げた感がしました。皆様はどう考えますか。

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最高裁大法廷での弁論が意味するところ
裁判所法10条但し書きでは、最高裁が(1)当事者の主張に基づき、法律等について初の憲法判断をする場合、(2)法律等が違憲と認める場合、(3)最高裁が過去にした判例を変更する場合には、大法廷で取扱うこととされています。このことから、今回の大法廷で弁論が実施されたことから、以前に合憲とした判断を変更するものと予測されます。

非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2 分の1とする民法規定
法定相続分について、民法900条4 号は、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする」と定めつつ、その但書前段で、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2 分の1 」と規定しています。嫡出でない子=嫡出子(ちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子供を言います。 

たとえば、父親Aに妻と2人の嫡出子BC、婚姻していない女性Dとの間でできて認知された非嫡出子Eがいる場合の法定相続分は、妻2分の1となり、残りの2分の1を2人の嫡出子BCと非嫡出子Eで分けることになります。その場合の非嫡出子Eの相続分は、嫡出子BCの相続分の2分の1なので、BCの嫡出子の相続分はそれぞれ10分の2ずつ(合計10分の4)、非嫡出子Eの相続分は10分の1となります。

平成7(1995)年7月5日の最高裁大法廷決定(合憲)
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2 分の1とするこの民法900条4 号但書規定が法の下の平等を定める憲法14条1項に違反しないかについては、平成7(1995)年7月5日の最高裁大法廷決定(民集49巻7号1789頁)で合憲とされました。

その理由では、「(この規定の)立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものであって、現行民法が法律婚主義を採用している以上、その立法理由には合理的な根拠があり、非嫡出子の法定相続分を2分の1としたことが右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできない。」としました。 

反対意見について
しかし、この平成7年の大法廷決定に対しては、中島敏次郎・大野正男・高橋久子・尾崎行信・遠藤光男の5 裁判官による以下のような反対意見がありました。

「嫡出子と非嫡出子との法定相続分における区別は、憲法24条2項が個人の尊厳を立法上の原則としている趣旨に相容れず、出生について何の責任も負わない非嫡出子をそのことを理由に法律上差別することは、婚姻の尊重・保護という立法目的の枠を超えるものであり、立法目的と手段との実質的関連性は認められない。本件規定が制定当初において合理性があったとしても、その後の社会意識の変化、諸外国の立法の趨勢(すうせい)、国内における立法改正の動向、批准された条約等により、少なくとも今日の時点においては、立法目的と手段との間の実質的関連性は失われている。」

違憲の流れ
このように最高裁は規定を合憲としましたが、学会では違憲と指摘する意見が絶えず、法相の諮問機関である法制審議会も、1996年に民法改正による差別解消が答申されていました。しかし法改正はなされず、その後も同種の問題が繰り返して訴訟で争われ、2011年に大阪高裁と名古屋高裁が、2012年には静岡地裁浜松支部で違憲判断が示されていました。今回の最高裁の変化は、反対意見が指摘していた①社会意識の変化、②諸外国の立法の趨勢、③国内における立法改正の動向、④批准された条約等の存在が、時代を経てついに合憲性の維持に困難との判断に傾いたものと思います。

何をおいても、出生について何らの責任がない子が、相続の面で不平等な扱いを受けるという理不尽さが、憲法の理念に反するという当たり前のような結論が、ようやく日の目をみたものと思います。生を授かった子は、本人の意思、努力及び行いと無関係な事柄からは差別されることなく等しく権利を付与されるべきだと思います。

また、社会においても、家族生活や親子関係についての多様なあり方が広く認められるようになってきています。平成7年の大法廷決定が前提とする「社会事情、国民感情」も、その多様性を尊重する時代となっているように思われます。統計上でも、子を有しない夫婦の割合が増える一方、出生数に占める非嫡出子の割合が増加しています。このような時代背景からしても、本規定は、合理的な裁量の範囲とは到底言えなくなっているものと思います。国際的にも、国連の女性差別撤廃委員会や自由権規約委員会で、日本のこの非嫡出子差別に対し、相次いで懸念が表明されている点も無視できません。
秋以降には出されるという大法廷判決が注目されます。

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