大阪プライム法律事務所

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愛は法で縛れない(ラビング事件)

13.08.08 | 企業の法制度

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この7月2日の朝日新聞の「特派員メモ」なる欄で、「愛は法で縛れない」という記事が目につきました。ワシントン支局の中井大助記者が書いていました。

このメモ記事は、米連邦最高裁が、この6月26日に、結婚を男女間に限ると規定した連邦法「結婚防衛法(DOMA)」(1996年制定)を違憲とし、同性婚者にも男女婚者と平等の権利を保障するという判決を下したことに関して書かれたものです。
その中で「米国の同性婚をめぐる訴訟で、よく引き合いに出される判例がある」として、連邦最高裁が46年前に言い渡した「ラビング事件」を紹介しています。どのような事件だったのでしょうか。(写真はグアム島恋人岬のハート・ロック)

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特派員メモには、続いて次のように書かれていました。
『かつて米国の複数の州には、異人種間の結婚を禁じる法律があった。こうした法律をすべて「違憲」としたのが、この判決だ。人種の枠を超えて結婚したことでバージニア州法に違反したとして逮捕・起訴された夫婦の名字に由来する。「愛情」を意味することもあり、さらに象徴的存在となった。愛する人との結婚が犯罪になるなんて、今では想像もできない。私の日本人の父親と白人の母親が49年前に米国で結婚した当時も、州によっては認められなかったのだ。決して他人事ではない。その最高裁が6月末に初めて同性婚の権利を認め、「結婚防衛法」を違憲とした。同性婚を認めている州はまだ少数で、判決によって全米に一気に広まるわけではない。だが、大きな節目であるのは間違いない。46年後には「同性婚が禁じられていたなんて想像できない」という状況になると思う。いや、もっと早いかもしれない。』

「異人種間結婚禁止法」撤廃運動とは
信じられないことですが、米国には、かつて「異人種間結婚禁止法」なるものがありました。それも古い話というものではなく、米最高裁が1967年に、同法を違憲とする歴史的な判決を下すまでは多くの州で堂々と実行されていたのです。また、ごく最近まで存在し続けた州もあったのです。

その裁判の当事者となったのが、バージニア州に住んでいたミルドレッド・ラビングさん(Mildred Jeter Loving)という黒人女性でした。バージニア州で異人種間の結婚が禁止されていた1958年に、17歳だったラビングさんは、23歳白人の建設作業員であるリチャード・ラビング(Richard Loving)さんと、ワシントンD.C.で結婚し、バージニア州で生活を始めました。ところが、すぐに保安官が突然訪ねてきて、「白人男性を夫にした」という罪でラビングさんだけを逮捕したのでした。その後、2人は州外退去を強制され、ワシントンD.C.に移りましたが、その後、支援団体とともに、この異人種間結婚禁止法(州法)が米国憲法に違反するとして州政府を訴えたところ、連邦最高裁が1967年に、この州法を違憲とする判決を下したのでした。まさに、「愛は法で縛れない」を地でいく話です。

これによって、ほかの州でも存在した異人種間結婚禁止法が廃止されていきましたが、南部のアラバマ州では、2000年になってようやく異人種間結婚禁止法が撤廃されたとのことです。

連邦法「結婚防衛法」違憲判決との関連
米連邦最高裁が6月26日に下した連邦法「結婚防衛法」違憲判決は、同じように「愛は法で縛れない」という流れで語られているわけです。

最高裁で争われていたのは、「結婚は男女間に限る」と定義した連邦法「結婚防衛法」と、カリフォルニア州憲法の同性婚禁止条項の合憲性でした。結婚防衛法はこれまで、同性婚が認められている首都ワシントンと12州で合法的に結婚した同性婚者にも、配偶者税控除や社会保障などについて異性婚者と同じ権利を認めてきませんでした。しかし連邦最高裁は、同性婚を異性婚と差別して、同じような利益享受を認めていないのは、自由や財産権を保障する合衆国憲法修正第5条に照らして「違憲」と判断したのでした。その結果、異性婚者だけに認められていた所得税や相続税など1000項目以上もの優遇措置が同性婚者にも拡大される見通しになりました。

日本では
日本において同性結婚は現在のところ法的に認められていません。また、このような方向での議論はほとんど進んでいません。同性婚を認める法律がないだけでなく、米国のようにこれを禁止する法律すら存在していません。憲法自体が24条で、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」するという表現で、当然の前提として「男女」のみを婚姻の対象としていますが、将来は、欧米のような議論が生じるのかもしれません。

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