大阪プライム法律事務所

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京都府南部地域での「地家裁支部設置」運動

13.10.12 | 企業の法制度

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京都弁護士会では、京都府南部への地方裁判所・家庭裁判所の支部設置を求めて運動をしています。京都府内には現在、舞鶴、宮津、福知山、園部の4支部がありますが、府南部にはなく、住民は京都御所近くの京都地裁・家裁本庁まで出向かねばならないのが現状です。

京都弁護士会では、平成20年11月に推進本部を設置して運動を開始し、本年5月の総会では、「京都府南部地域に地方裁判所及び家庭裁判所の支部の新設を求める決議」を採択しました。そこでは、京都地裁・家裁へのアクセスが不便なことや、府南部で人口が増加傾向にあることを挙げ、「居住する地域に関わらず、等しく裁判を受ける権利が保障されるべき」と訴えています。この決議書は、最高裁長官、首相、法相らに送付されました。なぜ、必要性が高いと言えるのでしょうか。(左上のイラストは京都弁護士会リーフレットより)

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京都府下の裁判所
京都府では、京都市に地方裁判所と家庭裁判所の本庁がそれぞれ一つあります。しかし、その支部といえば、京都府北部にある宮津、舞鶴、福知山、園部の4つの支部のみです。京都府南部(京都市よりも南にある地域)には、簡易裁判所(宇治、木津)があるだけで、まったく地家裁支部がありません。

簡易裁判所はきわめて限られた軽微な事件(訴訟の目的の価額が140万円を超えない民事事件や罰金以下の刑事事件など)しか扱いませんので、そういった事件は全て、京都市内にある地家裁本庁まで足を運ばなければならないのです。

京都府南部地域に地家裁支部が必要な理由(京都弁護士会HPより)
京都府南部の人口は、57万人を越えています。それは京都府全体の約21%にも相当しています。中でも京田辺市、木津川市、精華町の人口はここ10年ほどの間増加傾向を維持してきています。京都市以南の地域のうち、京都市内へのアクセスが比較的良い乙訓地域や宇治市・八幡市城陽市などを仮に除いても、木津川市・京田辺市・井手町宇治田原町精華町・和束町・笠置町南山城村の2市6町村の人口の合計は20万人を超えています。

京都府北部の4つの支部管内の人口と比較しても、その4地域の合計人口は約45万人であるのに対して、南部地域の人口は既に57万人を越えています。その人口数から考えても、南部地域に一つの支部もないということは、きわめてアンバランスと言えます。

さらに、京都府北部の4つの支部管内の各簡易裁判所(園部、亀岡、宮津、京丹後、舞鶴、福知山)の新受理事件件数が年間3742件であるのに対して、南部地域の簡易裁判所(宇治、木津)のそれが3143件と、後者が前者にきわめて近接しています。

また、京都府南部の地域の産業構造は、製造業、農林水産業などの構成比が高く、サービス業等第三次産業の構成比が高い京都市と大きく異なっており、また、その地域内総生産は、京都市と比較しても約3分の1の規模になっています。

裁判を受ける権利からの視点
京都府南部から京都市内の本庁まで行くには、公共交通機関を使ってもかなりの時間を要し、労力的にも非常に大変なことです。時間に余裕がない場合や高齢者などは、場合によってはあきらめてしまうことも十分ありえます。憲法32条は裁判を受ける権利を保障していますが、京都のこの現状からすれば、居住する地域によって実質的に平等に保障されておらず、「法の支配」が行き届かない状況にあると懸念されます。裁判を受ける権利が実質保障されない限り、法の支配、すなわち、究極の理念である個人の尊厳の実現もあり得ません。 

開設実例
地家裁支部の設置根拠は最高裁判所規則であって、支部設置の決定権限をもつのは最高裁判所です。本来は、裁判所の配置は、国民自身が決めるものであるにも関わらず、現実には、どこに支部を設置するかは、最高裁が判断し、国民が直接関与することはできません。

しかし、支部新設については、北海道の苫小牧市、神奈川県の相模原市に支部新設の実例があります。

相模原市の場合は、そこに住む弁護士を中心に、自治体や地方議会、地元の諸団体が連携して粘り強く地家裁支部新設の必要性を訴え、地元自治体の首長が連名で支部新設の要望書を最高裁判所に提出したり、相模原市長が最高裁に直訴し、用地確保に協力するなどの活動をした結果、10年以上の時を経て、ようやく支部新設に至っています。これからすると、南部地域の自治体、住民、企業や経済団体の方々が、この問題を京都府全体の大きな課題としてとらえ、市民の熱意で新設運動を広げていかないと実現が困難であろうと思います。

和歌山県橋本市でも
現在、和歌山県橋本市でも、地元自治体、地元経済団体が、地元のバランスのとれた発展、地域作りのためには地域に地家裁支部が必要であることして、橋本市や橋本商工会議所などを中心に「裁判所橋本支部設置推進協議会」の設立準備が進められ、地家裁支部の新設運動が起こりつつあります。 

県民に対する司法サービスの充実に責任を負っている和歌山弁護士会も、地域住民とともに、和歌山地家裁橋本支部(仮称)の新設実現のための運動に取り組み始めています。

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