大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

日本版クラス・アクション法とは

14.04.19 | 企業の法制度

"

特定適格消費者団体が、業者によって被害を受けた消費者を代表して、その業者を被告として訴訟を起こすことができる「消費者裁判手続特例法」が昨年12月に成立し公布されました。正式な法律名は「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」といい、今後、最高裁等による関係規則の制定を経て、公布の日から起算して3年以内(平成28年12月まで)に施行されます。
米国のクラス・アクション制度とは制度設計において異なる点はありますが、消費者の集団的な財産的被害の回復を図るという点で類似した面があるので、「日本版クラス・アクション制度」とも呼ばれています。どのようなものでしょうか。

"

"

業者の悪質な経済活動の結果、消費者が損害を被った場合、その消費者は民法や消費者関連法などを用いて、自ら示談交渉や訴訟などを経て、損害の回復を図ろうとすることは可能です。しかしその場合、弁護士への依頼などが必要となって、その費用や負担は大きなものがあるほか、頑張ってそれをやっても、確実に金銭が回収できるという保証もありません。そのために、最初から権利実現の行為をやめて泣き寝入りしてしまう被害者が多数ありました。 

これまでも、一定の消費者団体(適格消費者団体)が、業者に対し訴訟を起こし、契約や勧誘の差し止めを請求することができる消費者団体訴訟の制度はスタートしていました。ただし、損害賠償の請求はできませんでした。この現行制度を一歩進めて、被害者の金銭的な被害回復を図るための新たな制度として、制定されたのが今回の新制度です。 

この制度は、消費者被害を受けた者が、申立団体の行う被害回復手続に参加するためには、申立団体に授権することにより自発的に訴訟に参加することが求められる「参加型」の仕組みを採用しています。また、巨額となりうる制裁的慰謝料制度が導入されていない点などから、米国クラス・アクション制度とは異なっています。 

制度の概要
訴訟手続は、以下の二段階に分けて実施されます。

① 第一段階(共通義務確認訴訟)
特定適格消費者団体が原告となって提起される訴訟です。
この段階では、事業者の共通義務(消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的損害について、これらの消費者全体に共通する事実上・法律上の原因に基づき、金銭を支払う義務)の有無が審理されます。
② 第二段階(簡易確定手続)
第一段階において事業者の共通義務が認められた場合、その結果を前提として、簡易確定手続が開始されることになります。この段階では、対象消費者から授権を受けた特定適格消費者団体による裁判所に対する債権届出に基づき、事業者が認否をし、その認否を争う旨の申出がない場合はその認否により、その認否を争う旨の申出がある場合は裁判所の決定により、対象債権の存否及び内容が確定されます。 

本制度の対象となる権利
事業者が消費者に対して負う「金銭の支払義務」であって、消費者契約(労働契約を除く、消費者と事業者との間で締結される契約)に関する次のいずれかに該当する請求とされています。

①契約上の債務の履行請求
②不当利得に係る請求
③契約上の債務の不履行による損害賠償請求
④瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求
⑤不法行為に基づく民法の規定による損害賠償請求 

対象外となるもの
次の損害は本制度の対象外とされています。
①拡大損害(消費者契約の目的となるもの以外の財産が滅失・損傷したことによる損害)
②逸失利益(契約の目的物の提供があれば得られるはずであった利益を喪失したことによる損害)
③人身損害(人の生命・身体を害されたことによる損害)
④慰謝料(精神上の苦痛を受けたことによる損害) 

消費者側のメリット
一段階目の手続の結果を踏んで、裁判に勝てるか否かの見通しが立った上で、二段階目の手続への加入の有無を決めることができます。これで、個人が各自に裁判を起こす場合と比べて手間や経済的負担が大幅に軽くなり、「泣き寝入り」を招いている現行制度の最大の課題が改善されることが期待されています。 

米国のクラス・アクション制度と異なる点
日本の制度では、訴えを起こせるのは「特定適格消費者団体」という、国が認定した一定の団体に限定されています。対象となる損害も上記のように限定があり、いわゆる拡大損害(人身損害や慰謝料など)が含まれていない点が大きく異なっています。また、救済対象者は、2段階目の手続きに参加した消費者だけということも違っています。 

特定適格消費者団体とは
消費者を代表して、業者を被告として訴訟を起こすことができる団体は、「特定適格消費者団体」といいます。これは、消費者契約法に基づき内閣総理大臣の認定を受け、差止請求をすることができる適格消費者団体(現在11団体)から、新たに設けられた要件に基づき改めて認定された団体を「特定適格消費者団体」とされます。 

現在の適格消費者団体
特定非営利活動法人 消費者機構日本
特定非営利活動法人 消費者支援機構関西
社団法人 全国消費生活相談員協会
特定非営利活動法人 京都消費者契約ネットワーク
特定非営利活動法人 消費者ネット広島
特定非営利活動法人 ひょうご消費者ネット
特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
特定非営利活動法人 消費者支援ネット北海道
特定非営利活動法人 消費者被害防止ネットワーク東海(旧 あいち消費者被害防止ネットワーク)
特定非営利活動法人 大分県消費者問題ネットワーク
特定非営利活動法人 消費者支援機構福岡

"

TOPへ