大阪プライム法律事務所

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法人版マイナンバー制度とは

14.07.12 | 企業の法制度

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今年の7月8日に、日本経済新聞電子版の記事“登記など一括申請 企業版マイナンバー、17年から導入”という記事がありました。これは、「政府は2016年から企業に割り振る法人番号(企業版マイナンバー)を活用し、行政手続きを簡素化する方針だ。17年1月からネット上で、登記や納税証明書などを一括で申請・取得できるようにする。日本の行政手続きは主要国の中でも煩雑さが目立っており、外資系企業の不満が強い。企業版マイナンバーで行政手続きを改善できるかは対日投資にも影響を与えそうだ。」と、企業版(法人版)マイナンバー制度を大きく報じたものでした。

この制度は、個人のマイナンバー制度と同様に、2年後に利用が始まります。株式会社だけでなく非営利を含む全ての法人と一定の任意団体まで対象となるこの制度、開始されるといってもピンとこない人が多いかもしれませんが、どのようなものでしょうか。

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上記の日経記事によると、続けて以下の説明がされています。

「13桁の番号で、商号や所在地が番号とひも付けられる。政府は17年1月に法人番号を活用し、ネット上で行政手続きができる仕組みを作る。「法人ポータル」の名称で、登記事項や納税の証明書の申請や取得がネット上で一括でできるようにする。」

個人版の「社会保障・税番号制度(マイナンバー)」とは
昨年(2013年)5月24日に、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」が成立しました。この法律は、もっぱら個人を対象とした制度として話題となってきました。 

これは、日本の住民全員に固有の番号(個人番号)を付番する番号制度を導入し、複数の機関に存在する個人の情報を同一人の情報であるということの確認を行うための社会基盤(インフラ)として、「社会保障・税制度の効率性・透明性の確保」と「国民にとって利便性の高い公平・公正な社会の実現」に向けた制度とされています。国民一人ひとりに番号を割り振って(中長期在留の外国人や法人にも付けられます)、所得や納税実績、社会保障に関して一元的に管理するというものです。来年(2015年)中に、住所地の市町村から各人の個人番号が記載された通知カードが交付され、2016年1月から利用が始まります。この番号をキーにして、納税額や年金・介護の保険料納付状況などの個人データを引き出し照合するのが共通番号制の仕組みなので、お上には非常に都合がいいようです。また、情報の漏えいが大変に恐ろしいと言えます。 

法人も対象(マイナンバー法58条)
実は、あまり広く認知されていませんが、この制度は法人も対象としていて、マイナンバー法第7章第58条で、以下のように、「国税庁長官は、法人等に法人番号を通知する」と規定して、法人番号を付ける対象を列記しています。一般的な企業・法人は、全て法人番号が付くこととなります。 

第7章 法人番号(通知等)
第58条  国税庁長官は、政令で定めるところにより、法人等(国の機関、地方公共団体及び会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法令の規定により設立の登記をした法人並びにこれらの法人以外の法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの(以下この条において「人格のない社団等」という。)であって、所得税法(中略)の規定により届出書を提出することとされているものをいう。(以下略))に対して、法人番号を指定し、これを当該法人等に通知するものとする。

対象法人は以下のとおり
(1)国の機関
(2)地方公共団体
(3)法令の規定により設立の登記をした法人(設立登記法人)
(4)前記以外の法人又は人格のない社団等であって所得税法第230条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)、法人税法第148条(内国普通法人等の設立の届出)、第149条(外国普通法人となつた旨の届出)、第150条(公益法人等又は人格のない社団等の収益事業の開始等の届出)、消費税法第57条(小規模事業者の納税義務の免除が適用されなくなった場合等の届出)のいずれかの届出書を提出することとされているもの。

ここでいう「人格のない社団等」とは、「法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの」とされています。この代表者又は管理者の定めがある者とは、従来の税務上の取扱いと同様、当該社団又は財団の定款、寄附行為、規約等によって代表者又は管理人が定められている場合のほか、当該社団又は財団の業務に係る契約を締結し、その金銭、物品等を管理する等の業務を主宰する者が事実上あることを含むものと解されます。なお、人格のない社団については、具体的には、①団体としての組織を備えていること、②多数決の原則が行われていること、③構成員が変更しても団体そのものは存続すること、④その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること、の要件が備わる団体が該当することになると解されます。

導入のメリット
これを導入することで、行政機関は事務作業の効率化を図ることができるようです。日経記事によると、「現在は、企業は必要な手続きのために、法務局や税務署などに担当者を出向かせなければいけない。本社を移転した際に必要な電力やガス、水道会社への連絡も法人番号を使ってネット上で一括でできるようにする。補助金や入札参加の申請もネット上でできるようにする。企業はこれまで必要としていた紙の申請書類や人手が削減できる。」としています。

法人番号と個人番号の制度上での大きな違い
両者には、番号の扱いに関しては、大きな違いがあります。個人番号は個人情報保護の上から、厳格な個人情報保護に関わる制限が厳しく定められています。実に、同法の第3章に36ある条文は、個人情報保護に関する規定が占めています。ところが、法人番号では、同法第7章の4つの条文だけで、極めてシンプルです。つまり、法人であるがために個人情報のような情報制限がほとんどありません。一部例外を除いて、企業などの商号または名称、本店または主な事務所の所在地、法人番号という「基本三情報」は、国税庁から公表され、その情報は民間でも自由に使えるようです。さまざまな使い方が広がるかもしれません。

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