大阪プライム法律事務所

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司法試験予備試験とは

14.09.15 | 企業の法制度

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2014年度実施の司法試験の合格発表が、先日ありました。法務省によると、今回の合格者は、男性1402人、女性408人の1810人で、去年より239人少なくなりました。政府は「合格者3000人」の目標を撤廃しましたが、合格者が2000人を下回ったのは現行の試験制度が始まった2006年以来、8年ぶりのことでした。

他方、法科大学院を経ない「予備試験」合格資格での合格者は163人で、過去最高となりました。法科大学院修了者の合格率は21.19%でしたが、予備試験合格者の合格率は66.80%と大幅な違いがありました。この「予備試験」とはどういうものでしょうか。

(写真は法務省本館)

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■司法制度改革
1999年から行われてきた司法制度全般に関する改革が進められてきました。これは裁判員制度、司法サービスの充実、法曹養成制度など、非常に多岐にわたるものでした。 

その中で、法曹人口を増やし社会の法的ニーズに対応するためとして、司法試験の改革も実施されました。内容は法科大学院の設置、法科大学院修了を受験条件とする新司法試験の開始、司法試験合格者の大幅増でした。

その過程で、従来の司法試験は2010年で終了となり、2011年から、経済的事情から法科大学院に通えない者のために「予備試験」が開始されました。 

このように、予備試験の制度は、本来は経済的事情などの理由で法科大学院に通えない者に対する救済措置でした。しかし、その合格率は旧司法試験並みの狭き門ではありますが、合格すれば法科大学院に入学する必要がなく、早期に司法試験を受験することも可能なため、法科大学院へ行くよりもむしろ予備試験を受験する方が合格への近道と見なされる傾向が強くなってきました。 

■予備試験の問題点(廃止論)
このため、試験開始3年後の今年には、予備試験の受験志願者数が法科大学院の志願者数を上回る状態となってしまいました。予備試験受験者の増加は、「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者」のための途を確保するために設けられた予備試験本来の制度趣旨に沿わない状況と言えます。

また、大学在学中に予備試験を受験する者が増え、法科大学院に入学せず予備試験を利用する者がいるなどの傾向もあります。さらには、法科大学院に在籍しながら、予備試験を受ける者も増加し,そのための勉強に力を入れて法科大学院での学習をおろそかにする者まで出てきました。 

これを危惧した法科大学院側からは「法科大学院の設立当初の理念が軽視され、大学院の学生離れが進む」と懸念する声が高まってきています。こうした流れに歯止めをかけるため、予備試験の受験資格に一定の制限を設けることなどについて「法曹養成制度改革推進会議」が議論しています。経済同友会では予備試験の廃止を主張しています。他方では法科大学院制度自体が既に破綻しているとして、法科大学院を廃止するべきとの意見も根強く言われています。 

■予備試験拡大の動きも
このような中、平成25年5月29日の衆議院法務委員会において,枝野幸男委員(民主党・元内閣官房長官)から、「予備試験は…あくまでも一定水準に達しているかどうかを判断する試験である、一定水準を超えている人が何万人いようと,その水準を超えたらその人たちは合格させる」のかどうかという質問がなされました。 

これに対する谷垣法務大臣からの答弁は、「端的に言えば、今委員がおっしゃったとおりでございます。」「要は、法科大学院修了者と同等の学力、能力があるかどうかを確かめるためのもので、そこで特別のフィルターにかけるというような性格のものではないというふうに考えております。」ということでした。 

この答弁は、予備試験は、司法試験を受けようとする者が、法科大学院課程修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とするという、司法試験法の原則論からは当然のことといえました。しかし、これでいくと、「予備試験の合格者数を絞る」という現状の方向性と合わなくなってきます。その結果、予備試験は狭い門であはるものの、その合格者による司法試験合格率は、法科大学院修了者よりもはるかに高い数字を示していて、原則と実際がかい離してしまっています。 

今後、法科大学院制度のあり方とも絡んで、どのように制度を考えていくのかは、難しいところです。

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