大阪プライム法律事務所

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アマゾンジャパンの家宅捜索(児童ポルノ)

15.02.15 | 企業の法制度

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ネット通販大手のアマゾンジャパンが、運営するインターネット通販サイトで児童ポルノ商品を掲示していたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(販売ほう助)の疑いで、家宅捜索を受けたということです。捜索したのは愛知県警で、時期は1月23日、場所は東京本社および千葉県市川市にある関連子会社の配送センターといいます。アマゾンジャパンが、自社の通販サイト上で児童ポルノ関連商品が出品されていることを知りながら削除せずに黙認していたことが、これら商品の販売ほう助になると考えられたからのようです。

こういったネット通販事業をなそうとする場合や、そこへ商品を出品しようとする場合、こういった違法物について十分な注意が必要です。今回のケースは、児童買春・ポルノ禁止法(児童ポルノ禁止法)が昨年に改正され、単純な所持であっても、1年間の猶予期間をおいた今年の7月からは、違法として刑罰の対象となることがその背景にあると思われます。特に児童ポルノの定義が不明確との批判もあることから、問題を複雑化しています。

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■アマゾンのネット通販とは
このようなネット通販サイトは、電子商店街、ネット商店街などとも言われて、インターネット上で複数の商店が商品を出品して販売しています。ここに出品する商店主は、個人事業者のほかに、単なる趣味で物を売る個人から大手企業までさまざまです。出品する側からすれば、支払決済が一括ででき、何をおいてもそのサイトの持つ集客力が魅力といえます。日本国内では、「アマゾン(Amazonマーケットプレイス)」、「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」などが大手です。 

アマゾン自体は、自らが販売者として商品を販売するほかに、Amazonマーケットプレイスというものがあって、第三者である出品者と購入者が売買するための場所を提供しています。価格は出品者がほぼ自由に設定できます。ここで商品が買われると、購入者はアマゾン指定の方法で支払いをし、出品者ヘは後日にアマゾンから手数料を引かれて代金が払われます。 

■今回の捜査を巡る背景
今回、家宅捜索に乗り出した愛知県警は、これまでにすでにアマゾンで児童ポルノの写真集などを出品していた全国の業者を、児童ポルノ禁止法違反(販売目的所持)で摘発していたようです。その延長として、販売の場を提供していた先を家宅捜索したということだろうと思います。

売った側の業者は、既に児童ポルノ禁止法によって販売目的所持罪が適用されますが、今年の7月からは、購入した側も所持罪として処罰対象となります。アマゾン側には、購入者の情報があるはずですので、そのデータが押収されていたら、今後の摘発に際して有力な情報となると思われます。 

■アマゾンジャパンは処罰されるか
今回、アマゾンジャパンは、児童ポルノ禁止法違反(提供ほう助)で処罰対象となるでしょうか。これが有罪となるためには、業者が出品した商品が児童ポルノであるのを知りながらこれを放置して、その販売を手助けすることの故意があったという事実が、証拠として存在していないとなりません。 

まず、今回の販売の主犯は、何をおいても、販売した業者です。この場合は、ネット通販サイトを利用した不特定多数に対する「提供罪」が成立します。その法定刑は5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。

この場合、アマゾンジャパン側は、原則としては商品現物そのものを自ら取り扱わずに、販売の場所だけの提供ですので、そこで何が取引されているのかについては知りえない状態と言えます。ただし、客観面だけから見ると、正犯たる販売業者の販売行為を手助けしているので、「ほう助」にあたると言われる可能性があります。

しかし、アマゾン側は、出店の際の規約の上で、「児童ポルノ」の販売をしてはいけない旨を明記しています。これに反して出品していることが分かれば、その商品を削除し、出品契約を解除できるようにもなっています。ただ、日々、大量の商品が同サイトを通じて流通しているために、全てをチェックすることはほぼ不可能と考えられます。このため、通常であれば、ほう助の故意がないとして提供ほう助の罪に問うことは難しいのではないか思います。 

■7月から施行の児童ポルノ所持罪とは
昨年(平成26年)6月18日に、議員立法として提出された児童買春・児童ポルノ禁止法改正法案が可決成立し、同年7月15日から施行されました。ただし、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する改正法7条1項は、施行の日から1年間は適用されないことになりました。これは、手元にそのような物を持っている者が廃棄するなどの時間的余裕を与えたものと言われています。その猶予期限も、今年の7月に迫っています。もし、気になる方は早く対応されるのがよいかと思います。

■乱用の危険
ただ、この改正については、いくつかの問題点も指摘されています。最大の問題としては、児童ポルノの定義が曖昧という点です。肌の露出程度など具体的な基準は示されていないためです。このため、警察や裁判所などの判断次第で摘発や処罰の対象となる可能性があります。また、水浴び中の自分の子供を撮影したものまでも、疑いをかけられる可能性もあります。実際にも、アメリカでは、自分の子供が入浴した時の写真を現像に出しただけで逮捕に至った事例まであるようです。このようなことから、これは該当しないだろうと思って持っていた子供の写真が、児童ポルノだと言われて、この罪に問われる恐れも指摘されています。

児童の保護のためには当然で、一定の法規制はやむをえないと思いますし、そのような商品を営利に用いようとする動きを排除しなければならない必要性はあると思います。ただし、表現の自由との兼ね合いは常に注意すべきですし、決して権力側に悪用・乱用されることが無いようにも注意が必要だと思います。

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