日高税務会計事務所

お客様・社員の意見はどこまで受け入れるのが良いのか?

16.12.12 | 所長メルマガ

最近のニュースで、近隣から騒音の苦情があることを理由として、年末の除夜の鐘をつくのを辞めたお寺があるそうです。また、ラジオ番組の中で学校でも近隣に気を遣ってか、チャイムが校外に聞こえ無いようになっているところも多いと紹介されていました。一方でモンスターとも言えるクレーマーの対応に頭を悩ます会社・役所・学校等の対応係の苦労も聞かれます。「お客様は神様」とは言われなくなりましたが、ネットやSNSの発達により対応を誤ると業務に大打撃となることも多いようです。今月は、お客様や社員の声(意見)について考えてみましょう

   まず、お客様についてですが、法令違反は速やかに対応するのが当然です。また、違反で無くても道義的に問題があるものも同様です。ここがキチンと出来ていないと事業は拡大出来ません。あと、官公庁や大手企業であれば、なるべく広く理解される意見に従うのは必然でしょう。しかし、中小零細企業では、ある程度、お客様を絞り込む必要があります。資本や規模が小さければ、お客様は限定されるのです。だから、万人向けの商品・サービスは魅力が弱くなり、お客様から受け入れ難いものとなります。さらに、新規以外では、既存のお客様のことを考えなければなりません。お客様を増やす目的で行なった行動が、既存客とくに上得意客を不利にしたり、期待しているものからズレて魅力が無くなってしまい、結果として流失につながることがあります。順番としては、上得意のお客様の声をまず聞き、次に一般に要望の多いことに対応するのが普通でしょう。それより前に、自社商品の特徴・魅力を正しくお客様に伝えることが大切です。故障等トラブルの起こり難い正しい活用を啓蒙することもクレームが減り、満足度が上がります。特に高額商品の場合、取引が1回でもなるべく、お客様との接点を持つことが大切で、これを地道に実行し業績を上げている会社もあります。そうすると改善点など色々と情報が集まり、新たなお客様の紹介もあったりします。事業を始めた当初はお客様の声を積極的に聞くことは大切ですが、レベルを上げ、お客様を良い意味で指導・教育し、ともに成長できるのが望ましいと思います。
 次に社員の声を聞くことについて考えてみましょう。パナソニック創業者の松下幸之助氏は、経営に「衆知」を集めることの大切さを講演会や著書等で述べられてました。ところが松下氏の元で仕事をした方の書かれた書物や講演等によると、人の話を熱心に聞いてくれるし、時には褒めてもらえることもある。しかし、ほとんど意見が採用されることは無かったそうです。私も若い頃、雑誌のインタビューで「衆知を集めるが、決断はワンマンで良い」ようなことを述べてあった記事を読んだ記憶があります。当時、これが本音で、社員の意見を聞くことは社内のコミュニケーションや情報の伝達をスムーズにするための手段だと思いました。しかし、事業の戦略や戦術についての勉強がすすむと解釈が変わりました。松下氏は経営理念の大切さも説いてありました。トップは誰よりも情熱を持って理念に基づく方針(戦略)を決める。それを実行するのは中間管理職や一般社員等です。手段・方法(戦術、戦闘)は現場の判断に任せ、臨機応変に適切にやって貰えば良い。ただし、現場は責任の取れる範囲(効率・実績など)を超えてはやらない。したがって、戦略的と言える事業上重要な決定事項(新規事業・商品開発・市場開拓・撤退・組織再編・合理化など)は、現場の反対が多くてもトップの責任でやる。社員が責任を負えない分野の意見に従ってしまうと結果的に事業が危うくなります。多数決(多数意見)で経営は行えないのです。

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