社会保険労務士法人村松事務所

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ミニコラム「組織原則が組織運営の問題を解決する」編

18.01.25 | ミニコラム

<賃金は社員の成長の後からついていくの原則>

日本の賃金制度の説明は常に、「社員のモチベーションを上げるためにどのような配分をすれば良いか」がテーマの中心でした。頑張りに合わせて賃金をたくさんもらえるのであれば、頑張ろうという気持ちになることは確かです。

しかし、バブル崩壊以降、それを強調し過ぎたために、さらに輪をかけた恐ろしい考え方が日本を席巻しました。「成果主義賃金制度」です。

成果とは結果です。結果が良ければ賃金が多い。それに対しておかしいと思う
経営者はいないでしょう。しかし、1つ大事なことを忘れてしまったと言わざる
を得ません。結果を上げていくように部下を指導することが、マネジメントを
行う上司の仕事だということです。

なかなか成長しない部下や成長半ばの部下もいます。部下指導とはそれらすべて
の部下をしっかりと指導することで成長させることです。そして、成長させるの
は当然、プロセスの部分です。

プロセスとは成果を上げるための重要業務です。または、重要業務を遂行するた
めに必要な知識・技術です。また、自社の社員である以上、守ってもらいたい考
え方や態度です。重要業務を遂行し知識・技術を身に着け勤務態度を守るように
指導することで、社員は成長していきます。成長していった結果として成果が上
がるのです。

成果主義賃金制度とはこのプロセスをまったく問わず、マネジメントを行う上司
が何を指導しているかは関係ないのです。端的に言うのであれば、「自分で成果
が上がる様にプロセスを考えなさい」という意味合いになります。社員は成果主
義賃金制度をそのままストレートに受け入れて、変わってしまいました。

今までは同じ企業に勤めた社員同士、何かの縁があって集まった仲間と競争をし
あいながらも、一緒に良くなろう、困っていたら助けてあげようと気持ちを包み
隠さず発揮してきていたはずでした。しかし、成果主義という言葉を聞いた瞬間
にその気持ちを押し殺すしかなくなりました。その気持ちをそっと箱の中に閉じ
込め、なかったことにしてしまった社員すらいるでしょう。

成果主義とは「利己主義」です。自分さえ成果が良ければ良い。自分の賃金さえ
上がれば良い。日本ではこんな社員を優秀だと言えることは基本的にありません。
なぜなら、一般職層(プレーヤー)で優秀な社員の次のステップは、一般職層で
行っていた仕事にマネジメントを加えた中堅職層(プレーイングマネージャー)
だからです。

マネジメントの主たる業務は部下指導です。仕事ができない部下に仕事を教え、
成長させること。これが次の中堅職層の社員の仕事となります。

この成長のプロセスが分かっているにもかかわらず、一般職層にいる間に自分の
ことしか考えてこなかった社員は、中堅職層で本当に人を育てることができるで
しょうか。残念ながらそれはほとんど無理と言わざるを得ません。

そのため、今の日本では成果主義で育ってきた社員が中堅職になろうとせずにプロ
フェッショナルコースにしか関心を持たないなど、組織の中で緊急事態と言えるこ
とがさまざまな現象として表れています。「役職に就きたくない人たちが増えてきた」
これもその弊害の1つと言えるでしょう。

日本では今まで「賃金で社員のモチベーションを上げる」ということを多くの専門家
が主張してきましたが、冷静に考えると、中小企業において、お金でモチベーション
を上げることは難しいのです。なぜなら、それほど多くない利益を社員に還元するこ
とが難しいからです。だからこそ、経営者は考えてきました。

「部下社員を成長させ、彼らが成果を上げるようになったら、業績が良くなります。
そして、あなたの成長の後を追いかけるように賃金が増えます」
 
その約束を、経営者は自分の中に秘めていました。これをそのとおりに賃金制度とし
てまとめ、社内に発表する時が来ました。

お金でモチベーションを上げるのではなく、社員をしっかりと指導してプロセスを向上
させた結果、成果を上げさせ、それが会社全体の業績アップに繋がり、後から社員の
賃金として還元されていく。このことをもう1度経営者が確認をして社内に発表してください。


   = この続きは、来月またお送りいたします。 =

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