社会保険労務士法人村松事務所

社会保険労務士法人村松事務所

「組織原則が組織運営の問題を解決する」編

18.04.17 | ミニコラム

<教える努力の報酬が労働分配率の改善の原則>

労働分配率は会社で何かの施策を打って改善しなければならないのです。
一般的には日本の中小企業と大手企業を比べると、明らかに大手企業の方が
労働分配率が低い(改善されている)ため、規模拡大をすることによって、
労働分配率が改善する、と誤解をする経営者もいます。

残念ながら規模拡大によって労働分配率が改善することはありません。
つまり、なんらかの施策をしっかりと打ち、労働分配率が改善することを
能動的にしていかなければならないのです。

たとえば、中途採用をしている会社の場合、中途採用を行っている理由の
1つに「人手が足りず忙しい」というものがあります。その状況の中で人を
採用するときに、「今採用した人がすぐに仕事ができなければ、人を採用
した意味がない」という考え方になり、どうしても即戦力――仕事ができる
人を採用しようと考えます。

仕事ができる人を採用するということは、その社員に対して、高い賃金を支
払うということです。原則として、労働分配率60%の会社は、労働分配率60%
以上の賃金を払って採用することになるでしょう。つまり、仕事ができて成果
を上げる社員を採用するためには、高い賃金を払うことになるのです。

このように「優秀な社員を高い賃金を支払って採用する」という中途採用の
仕方を続ける限り、労働分配率が改善することはありません。労働分配率は
高止まりのままとなります。少しでもその賃金に見合うだけの成長点数がな
いとすれば、残念ながら賃金を払い過ぎの社員を、労働分配率を悪化させて
採用したことになります。それに気がつかなければなりません。

最初の労働分配率改善の取り組みは、組織の中で教え合うことを恒常化させる
ということです。常に仕事のできる社員ができないに教える。知識・技術を持
っている人が持っていない人に教える。勤務態度を守るように教えるのです。

つまり、成長点数の高い社員が成長点数の低い社員に教えることによって、
すべての社員を優秀にするということを実際に行動に移さないと、労働分配率
は改善しません。なぜなら、教えられた社員が、教えられた瞬間に教えた社員
と同じ賃金になることはないからです。
 
成長ステップの階段を1つ1つ登って行くように成長することになります。
最短で上がったとしても一晩にして3つも等級が上がることはありません。
標準や最短の年数を掛けて、ステップアップしていくことになります。

自分が教えてもらって1つ1つ成長したことを理解している社員が、一気に
収入が上がることを求めることはないでしょう。ところが、教えられることに
よって高い成果が上がるようになれば、その社員は賃金以上の高い成果を上げ
ることになってきます。これが最初の労働分配率の改善と言えます。組織の中
での教え合うという環境づくりが、労働分配率の改善に繋がるのです。

次は成長シートを構築した会社の施策として、新卒社員の採用に着手することに
なるでしょう。新卒社員は教える社員としては最高の社員です。社会人としての
勤務態度を1から教えられます。同様に重要業務や知識・技術も1から教えられ
ます。やがて成果を上げることができるようになり、一人前になって中堅職へス
テップアップしていきます。
 
つまり、すべてのことを1から教える努力を組織全体で取り組むことによって、
大きな労働分配率の改善となるのです。この教える努力が、マネジメント力を
向上をさせます。

仕事ができない人をできる様にするためにマネジメントはあります。新卒社員
を成長させ、教え上げることができた組織にのみ、マネジメント力がつくと言
えます。つまり、労働分配率の改善は教え合うという努力の賜物であり、部下
指導の力がついたことを意味しているのです。

今、労働分配率が高いとすれば、これから教え合う組織をつくることによって
改善する、または部下指導という力を高めることによって労働分配率を改善し
ていくという改善の方向性を理解して、この問題に着手していかなければなら
ないでしょう。

   = この続きは、来月またお送りいたします。 =

TOPへ