社会保険労務士法人村松事務所

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「組織原則が組織運営の問題を解決する」編

18.07.30 | ミニコラム

<残業代が成長を妨げる原則>

就業規則上、労働法上は、社員が就業時間後もその会社にいることで残業を
支払う必要があります。仕事をしているという前提で会社にいるからです。
これは、通常の経営の中ではありえないことを意味します。

残業代は、残業によって得た収益の中から払うことになります。まして残業
は通常とは異なり25%の割増の賃金を支払うことになります。社員にとって
みれば、この残業代が嬉しくないはずがありません。

残業することによって収入を得られることが分かったとすれば、残業をして
収入を増やそうと社員が考えるのは決して不思議なことではありません。

残業の理由は問いません。失敗だろうが段取りが悪かろうが、または単に仕事
をせず社内に残っていようが、理由を問わず残業代を手にすることがあれば、
社員は残業代を当てにするようになるでしょう。

会社の中で自分の昇給・賞与がどう決まるか分からない会社は特に、当然なが
らこのように残業を目当てに収入を増やすようになるものです。

残業によって収入を増やす道を選んだ社員は、残念なことに成長することはな
いでしょう。なぜなら優秀な社員の特徴の1つに生産性があるからです。

生産性が高い社員はエンドレスで成長をすることができます。一時期残業をし
たとしても、常に所定内の時間でやろうと努力していますから、毎年のように
成長し続けることになります。

しかし、残業をしていては成長には限界があります。2時間…3時間と残業を
増やすことで収入を増やそうとしても、永久に増やすことはできません。

そのうえ、5時間や6時間も残業をすれば、当然ながら次の日に影響を及ぼし、
成果を上げる妨げになります。そしていつしか社員は自分の成長を諦めること
になるのです。

「もうこれ以上頑張れません」というのは、「成果を上げたくない」という意味
ではなく、「もうこれ以上長くは働くことができない」という意味なのです。
ここに重要な問題が隠されています。

社員に残業で賃金を増やそうという考え方を持たせないためにも、社員の賃金は
どういうときに増えるのかということを明確にしてください。

①成長シートに従って成長する  ②全社員が教え合って業績を良くする

これまで経営者に尋ねてきて、上記の2つを満たしたときに社員の賃金が増えると、
すべての経営者が頷きました。ただし多くの会社はこの決め方を明確にしていない
ため、社員一人当たりの成果は常にあるところで頭打ちになります。

基本的な賃金向上の公式を見せながら、重要なのは生産性を向上させることである
と教える必要があるでしょう。特に固定残業をしている会社は、固定残業を払わな
ければ、その分は賞与として社員に戻ってくることを計算式にして示す必要があります。

これから労働力が毎年減少していきます。これは決まったトレンドであり、今すぐ
変えることはできません。少なくとも、これから20年間は間違いなく労働力が少な
くなっていき、競争が激しくなっていきます。

労働力が少なくなる中でそれを補うためには、労働時間をアップさせるのはなく、
生産性を向上させるしかないことを私たちは肝に銘じるべきでしょう。


   = この続きは、来月またお送りいたします。 =

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