18.09.10 | 非営利・公益

日本ボクシング連盟（JABF）は、内部から山根明終身会長などの旧幹部への疑惑を指摘する告発状がスポーツ庁や日本オリンピック委員会（JOC）などに提出され、大騒ぎとなっていました。その日本ボクシング連盟の臨時総会と理事会が、9月8日に開催され、辞任した山根前会長の後任として、疑惑を告発した「日本ボクシングを再興する会」発起人で宮崎県連会長の内田貞信氏が新会長に決定されました。
独特なキャラでワイドショーを賑わした前会長体制の崩壊で、疑惑の解明など、これからの連盟はどうなっていくのでしょうか。

■日本ボクシング連盟とは
日本ボクシング連盟は一般社団法人です。旧公益法人制度下では社団法人でしたが、2013年2月の総会で承認を経て、内閣府公益認定等委員会に一般社団法人への移行認可申請をし、移行認可が認められて、同年4月1日をもって一般社団法人に移行していました。日本国内におけるアマチュアボクシングの競技統括団体で、日本オリンピック委員会（JOC）及び国際ボクシング協会 (AIBA) に加盟しています。

■告発に至る経緯
「日本ボクシングを再興する会」がスポーツ庁やJOCなどに告発するに至った経緯は、8月8日の代表者の記者会見で説明がされました。

それによると、山根執行部の問題を正したいと考えたメンバーは、日本ボクシング連盟が一般社団法人であるため、公益社団法人のような直接的な監督官庁が存在しないため、内部からの自浄活動で改革を起こすしかないという結論に至り、都道府県連盟に山根明終身会長の退会要求書の提出に賛同を呼び掛けてきたということでした。これに対して山根執行部が厳しく対応をすることを表明したことから、都道府県連盟では二の足を踏むところが数多く存在したため、賛同者の集まりである「日本ボクシングを再興する会」が、ガバナンスの再構築をするために告発をするに至ったということでした。監督官庁の存在しない法人によるガバナンス改善の一つのあり方を示した好例と言えそうです。

■告発状はどこに送ったか
告発状がどこに送られたかは、報道ではよくわかりませんでしたが、どうやら、公益財団法人日本オリンピック委員会（JOC）、内閣府公益認定等委員会、公益財団法人日本スポーツ協会、文部科学省、文部科学大臣林芳正氏、スポーツ庁、スポーツ庁長官鈴木大地氏、独立行政法人日本スポーツ振興センター（JSC）の８か所のようです。
内閣府公益認定等委員会が入っているのは、旧公益法人時代の社団法人から一般社団法人への移行後は、移行時に作成した公益目的支出計画の履行がきちんとなされているかを確保するために必要な範囲内において同委員会が監督を行うこととなっているためと解されます。

■告発の１２項目とは
関心を呼ぶいくつかの疑惑項目はメディアで流れてはいましたが、１２項目全部の詳しい内容紹介はネット上では見当たりませんが、項目だけでしたら以下の内容であることが分かっています。
１　アスリート助成金の不正流用の教唆および隠蔽
２　試合用グローブ等の不透明な独占販売
３　競技力向上事業助成金に関する不透明な財務運営
４　全国大会開催県に交付する退会費に関する不正な財務運営
５　「 オリンピック基金 」に関する不透明な財務運営
６　公式試合における組織的な審判不正
７　全国大会開催時における不適切行動
８　不適切な理事の選任
９　山根会長の会長就任に介在した暴行疑惑
１０　国民体育大会の隔年実施疑惑競技への格下げ
１１　若年選手が自由に競技に取り組む可能性を阻害する決定
１２　全国高体連専門部の日本連盟に対する問題提起

■第三者委員会の設置
助成金流用などの不正疑惑については、日本オリンピック委員会（JOC）と日本スポーツ協会から要請された真相究明のための第三者委員会を設置しました。元日弁連会長の梶谷剛弁護士ら３人の弁護士と元警視庁刑事の計４名で構成され、現在調査を実施していて、近日中に調査した結果と今後の組織運営についての報告がなされる見込みです。

■新体制
「日本ボクシングを再興する会」から告発された疑惑は、日本スポーツ振興センターからの助成金不正流用、不正判定、不透明な財務運営疑惑など１２項目にわたるものでした。過去の反社会勢力との交際を認めた山根明会長は既に辞任し、今般の臨時総会と理事会の下で新会長が選出された次第です。

山根前会長を支えてきた吉森照夫専務理事、金庫番的な役割を果たしていたとも言われた内海祥子常務理事らの旧体制の理事も先に辞任していたため、臨時総会で選ばれた新理事26人のもとで新体制の方向性が決まり、山根政権は完全に終りを迎えました。この新体制のもとで、第三者委員会の結論を受けて、必要な責任追及やさらなる体制改善などが進められるものと思います。