大阪プライム法律事務所

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尊厳死協会の公益不認定に対する取消判決~控訴審も支持

19.11.10 | 非営利・公益

一般財団法人「日本尊厳死協会」が内閣府に申請していた公益認定が、内閣府から公益不認定処分を受けたため、東京地裁に、不認定処分の取消を求めた訴訟で、東京地裁は本年1月18日に尊厳死協会の主張を認め、不認定処分の取り消しを命じました。これに国が不服として控訴をしていましたが、東京高裁は本年10月30日に、処分の取り消しを命じた1審・東京地裁判決を支持し、国の控訴を棄却しました。

もともと、内閣府の不認定理由では、「認定すれば国が事業に積極的評価を与えたと認識され」弊害が生まれるなどとしていましたが、地裁判決では、「認定法に基づいて行政庁がする公益認定は、申請事業が公益目的事業、すなわち『不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの』であると認定したことを意味し、その限度において積極的評価を与えているものであるが、そのような法律上の位置づけを超えて、当該行政庁が当該事業に賛同しているとか、当該行政庁の方針が当該事業を行う法人の方針と同一であるとかといったことまで意味するものではない」という、ある意味当然のことを示しました。そのうえで、内閣府の公益認定当委員会が作成し公表していた認定のためのガイドラインチェックポイントに、裁判所が自ら当てはめを行うという判断代置の手法で公益認定の判断を行って、判決がなされました。

控訴審で、国は、内閣総理大臣が有する裁量権のもとでなされた不認定処分が違法となるのは、重要な事実の基礎を欠くか又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠いた場合に限られ、ガイドラインのチェックポイントに裁判所自らが当てはめを行うという判断代置の手法でなされた一審の判断は誤っていると主張していました。

しかし、東京高裁は、主務官庁が公益法人の公益性を判断して設立を許可していた従来の仕組みに起因した多くの問題点から、内閣に民間有識者からなる委員会を設置し、主務官庁から中立的で客観的な視点から事業等の公益性を判断する仕組みが作られ、その委員会で裁量の余地の少ない明確なガイドラインを作って公表している事実を挙げて、公益認定法では行政庁の裁量範囲を広範なものと解することができず、ガイドラインを参照して裁判所自らが判断することが適切であるとして、国の主張を採用しませんでした。

行政庁の裁量を狭く解した東京地裁判決に対して、行政庁に広範な裁量権を認めるべきとする国の主張が通れば、綿密に組み立てられてきた公益認定制度の趣旨が大きく後退する可能性もあった中で、今回の控訴審判決はこの点の不安を取り除く結果となりました。この判決は、今後の公益認定手続きにおける指針を明確に示したものであって、大いに意義深いものがある。

この事件の第一審判決については、拙著「公益不認定の取消判決における法的意義と認定制度への影響」(「公益・一般法人」993号:2019年9月15日号)にて詳しく解説をさせて頂いておりますので、関心のある方はご参照ください。

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