アーチ社会保険労務士事務所

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部下を持ったら知っておきたい『ちょうどいい仕事の機会の与え方』

23.08.16 | コラム【採用と定着】

例えば、ゴルフクラブ、釣り竿、調理器具、品質の良いツールは確かにいいですが、動画や本等で学んだだけで使いこなせるでしょうか?
動画や本等の良い学びは必須ですが、学ぶだけで実践できるでしょうか?ゴルフも釣りも料理も実践しないと上手くならないですよね。
ゴルフ場に行く=ゴルフの実践だとしたら、仕事も実践の場としての「機会」を与えることが人の成長に繋がります。

そこで大事なのは、ちょうどいい仕事の実践の場の与え方なのです。難しすぎても、簡単すぎてもよくない。でも、その「ちょうどいい」が難しいのです。その仕事の機会の与え方について深掘りし、「与える仕事の難易度」や、「仕事を与えた後にするべきこと」など、実際に部下に仕事を与える際に、上司の方に知っておいて欲しいことを解説します。

 ┃ そもそも成長につながる「機会」とは? 

新入社員や経験が少ない部下の成長につなげるためには、一方的に仕事を指示するだけではいけません。
指示を受けて仕事を行う従業員自身の「内発的動機」をうまく維持してあげる必要があります。

そして、この動機付けは「モチベーション」と言い換えることもでき、「内発的動機」をうまく維持する方法として、「モチベーションサイクル」という考え方があります。モチベーションサイクルとは、一般的に
「機会→支援→評価→承認→報酬」というサイクルのことで、これをうまく回してあげることによって、「内的動機付け」を維持することができます。

このサイクルの起点となるのが「機会」です。起点となる「機会」をうまく作ることができないと、その後のサイクルが動き出しません。
その後に上手くつながる「機会」を与える必要があるのです。では、「その後に上手くつながる機会」とは、どのようなものなのでしょうか?会社組織において「機会」とは、基本的に「仕事」になります。

つまり、「モチベーションを維持し、意欲的に仕事に向き合い続けることができ、結果的に成長につながるような仕事」が、良い機会となります。上司は何が「良い機会」か判断する必要があります。では、実際に業務を遂行する上で、具体的に、どのような仕事を与えれば良いのでしょうか?


 ┃ 与える仕事のさじ加減がポイント! 

与える仕事の内容や難易度のさじ加減は難しいものです。内発的動機を維持して、やる気を伴いながら打ち込むことができる仕事であることが必要です。「なぜこんな仕事を・・・」と不満を持ちながら仕事に取り組んでいる状況は、やる気を伴った状況ではありません。

このような状況では、その後のモチベーションサイクルは上手く機能せず、成長につながる可能性が低いです。場合によっては、不満のみが膨れ上がり、退職する結果になる可能性もあります。では、仕事の内容や難易度を、部下自身に判断させるのはどうでしょうか?「どのような仕事にやる気をもって取り組めると思うか?」といった感じで確認するイメージです。それに合致する仕事を与えて、後は本人に任せて、仕事を頑張ってもらい、面談などで定期的にその状況をヒアリングするようなやり方。


┃仕事の内容や難易度は上司自身が判断する 

このようなやり方が一番上手くいくように感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これではうまくいかない可能性が高いです。なぜなら、経験が少ない従業員には「ちょうどいい」というのがどの程度なのかを判断する能力が残念ながらないからです。「本人にちょうどいい仕事内容や難易度を判断させる」というのは、避けましょう。

成長につなげるためには、上司が、自身の経験を踏まえて、客観的な観点から仕事の内容や難易度を判断する必要があります。部下にどのような能力や経験が必要なのか、それを解決するためにはどのような課題を与えれば良いのか、といったことを理解したうえで、仕事を与える必要があります。これが、成長につながる「ちょうどよい機会」なのです。


 ┃ 難しすぎても簡単すぎてもだめ 

継続的な成長につながるような「ちょうどよい機会」となる仕事は、部下の経験や能力、キャリアプランなどを理解し、それを踏まえて内容を判断しなければなりません。そして、その内容は、難しすぎても簡単すぎてもよくありません。

難しすぎる仕事とは、例えば、
本来の仕事と関係が無く持っている知識を活かせない仕事とか、それまでの経験が全く活きない部署での仕事、といった、無理難題のような仕事が該当します。このような仕事を与えてしまうと、本人の成長につながる可能性が低いばかりか、絶望的になり逃げ出す原因になるかもしれません。

簡単すぎる仕事とは、例えば、単調で技術や経験が身につかない仕事や、問題解決を行う必要がない課題をこなすだけの仕事などが該当します。または、程よい難易度で成長につながるような課題を与えたとしても、それから逃げても何とかなるような状況、例えば、その課題を解決せずに過ごしても他の仕事で頑張れば相殺できるような状況では簡単すぎるのと変わりません。

このように、慢心したり、手を抜いて仕事をこなしてしまっては、本人の成長につながる可能性が低いです。できるかできないかギリギリの課題を与えられた場合に、人は最も大きな成果を出すそうです。

 ┃ 成長に繋がる仕事 

成長につながるような仕事とは、
「無理難題を押し付け、逃げ場をなくすような難しさ」ではなく
「手を抜いてもできるような簡単さ」でもない仕事であり、
そのうえで、「やらなくても済むような逃げ場」
があってはいけないのです。

例えば、これまで関わってきた仕事と同じ仕事でありながら、担当分野を少し変えるといった仕事、法人営業の仕事であれば、小規模事業者担当から、より詳細で複雑な分析や提案が望まれる大規模企業担当の部署に異動させるといった感じです。

それまでの経験や知識を活かすことができますし、部署が変わるので、「それまでの顧客との仕事でお茶を濁すようなやり方」が通用しません。このように、難しすぎず簡単すぎない仕事を与えることが、部下の継続的な成長につながる「ちょうどよい機会」になるのです。


 ┃ 継続的に部下の状況を「把握」すること 

さて、程よい難易度の仕事を与えたら、後は、本人に任せておけばよいのでしょうか?
もちろん、そうではありません。その後も、継続的に部下の状況を「把握」する必要があります。

なぜなら、仕事開始時には、本人にとって適当な難易度であったとしても、仕事を進めていく中で、難易度が適当ではなくなってくることも大いにあり得るのです。その理由は、社員ごとに性格や、成長スピードが異なるからです。

例えば、性格面では、難題にぶつかった時に適度に人のサポートを受けながら、自分で解決していける部下であれば良いですが、ストイックに課題に向き合うタイプの部下の場合、自分を追い込んでしまい、解決できないままトラブルになるまで課題を抱え込んでしまう可能性があります。そのような場合は、状況を見ながら、上司の方からサポートを提案することが必要でしょう。

逆に、仕事の習得が早いが、慣れてくると慢心したり手を抜きがちなタイプの部下の場合、課題の難易度を調整して手を抜けない環境づくりを行う必要があります。このように、仕事の開始時点では、適度な難易度であっても、その後にどのようになるかは人それぞれ変わります。

ちょうどよい機会とするためには、常に部下の状況を把握しながら、必要に応じて課題を調整したりサポートしていくことが必要です。
これが、上司のとても大切な役割なのです。決して「課題を与えて、後は期末面談で確認するだけ」ではいけません。そのような状況では、継続的な成長に繋がらないばかりか、という最悪の結末が引き起こされる可能性もあります。


以上が、成長に繋がる「ちょうどいい仕事の機会の与え方」でした。

このようなことを続けなければ、せっかく入った従業員が成長しないばかりか、退職してしまう結果になる可能性があります。
従業員には成長しながら長く定着してもらいたいものですよね。今回解説した内容を、無理のない範囲で実施していただくことで、お役に立てましたら嬉しく思います。

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