大阪プライム法律事務所

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日本版プランドギビング制度とは?

11.09.15 | 非営利・公益

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7月のこのコーナーで、認定NPO法人・公益法人等への大幅な税制改正が実現したことをご紹介しました。その際にも少し触れたのですが、この改正に際して、「日本版プランド・ギビング信託」という制度が創設されました。
これは、公益的な活動をするNPO等に寄付をしたいが、どこに寄付していいかわからないという方のために信託制度を活用して資産を寄附しようというもので、特に、高齢者の方が安心して寄付ができるようになると思います。

これも、寄付優遇税制の要件緩和と寄付控除の拡大とあわせて、日本の寄付文化の進展に大きく貢献しそうです。
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プランド・ギビングとは
「Planned Giving」、つまり「計画的寄付」という意味です。これを信託という手段で行うのが「プランド・ギビング信託」です。アメリカで普及していて、非営利団体への寄付を目的とした信託をした場合に、寄付者である個人が、寄付金控除を受けることができます。
 
日本版プランド・ギビング信託とは
今回創設されたこの制度は、次のようなものです。
 
(1)特定寄付信託契約の締結
まず、寄付者である個人は、信託銀行等との間で、「特定寄付信託契約」を結び、一括で金銭を預け入れると共に寄付先を指定します。つまり、受け入れた信託銀行が指定する公益法人、学校法人、医療機関、福祉施設、認定NPO法人の中から寄付したい団体を選びます。
 
(2)寄付の実行
その信託銀行等は、個人の方との契約に基づいて、信託期間(例えば20年間など)にわたって毎年一定額を、寄付先として指定された団体へ交付します。寄付を受けた団体は、その信託銀行を通じて活動実績を報告しなければなりません。これをみた個人は、寄付先を変えることもできます。
 
(3)運用収益の非課税
信託銀行等は、こうやって信託された金銭を運用して運用収益を上げます。通常の投資信託では、この運用収益に課税されますが、日本版プランド・ギビング信託制度では、これで生じた利子等の運用収益に対して非課税措置が設けられています。
 
(4)個人に対する寄付金控除
さらに、毎年交付される寄付金についても、個人において寄付金控除の対象となります。つまり、寄付金額の40%(所得税額の25%が限度)を所得税から10%を住民税からそれぞれ控除することが可能です。
 
(5)元本30%の還元
信託した金銭の30%を限度に、自分にバックすることができるという選択肢も用意されています。つまりは、信託した元本の30%を上限にして、個人年金のような形で毎年一定割合ずつ、自分自身が受け取ることもできます。
例えば、2億円を20年の特定寄付信託として、その30%を受け取る形にした場合、毎年の1000万円(=2億÷20年)の中の70%(=700万円)は指定した法人へ交付され、残る300万円は、毎年その個人へ戻されて支払われます。これによって毎年の定期的収入が確保でき、老後の安心も確保できるというわけです。利子等の運用収益に対する非課税措置と、寄付控除を受けながら、寄付と自分の生活の双方を満たすことになります。
 
(6)死亡時の寄付
この信託の権利は、他人に譲渡したり担保として提供することができず、寄付者たる個人が亡くなった場合は、その残額が寄付されることとなります。
 
なお、今回の制度では、寄付控除できるのは、信託財産が認定NPO法人などに寄付された時だけで、信託契約をした年には何らの節税効果がありません。信託した年に所得控除できるならば、もっと使う人が出てくるように思いますので、これからの課題かもしれません。

この制度が普及して、もっと寄付文化が拡大していけばと願うところです。
 
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