大阪プライム法律事務所

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「義援金」と「支援金」?

11.05.15 | 非営利・公益

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この度の東日本大震災では、多くの方々が被災者のために何らかの寄付をされています。その寄付金のなかには、「義援金」と「支援金」のふたつがあるのですが、その違いはご存知でしょうか?

通常、「義援金」は、日本赤十字社や赤い羽根の中央共同募金会への2つの寄付の場面で使われます。新聞社・放送局などのマスコミや各種団体が集める募金なども、その多くが赤十字社や中央共同募金会に送られ、総額が被災者に平等に分配されることになっています。その総額は、この5月12日時点で2100億円を超えています。これは、阪神淡路大震災の時に集まった1655億円を既に上回ったことになります。

これに対して、被災地支援の活動に取り組むNGO・NPO、ボランティア団体等に寄付することも多くあり、これらは「支援金」と呼ばれています。
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■義援金
義援金は、日本赤十字社と中央共同募金会に集められた後、被災都道県、日本赤十字社、中央共同募金会をはじめとする義援金受付団体を構成メンバーとする「義援金配分委員会」が、被災状況に応じて、配分を審議決定します。この義援金配分委員会の法的な性格は、災害対策基本法第40条又は第42条に規定する地域防災計画に基づいて、地方公共団体が組織する委員会のようです。
 
しかし、今回の震災では、被災が15都道府県と多く、その都道府県間の配分基準の調整がうまく進みませんでした。このため、厚労省が事務局を引き受けて、ようやくこの4月8日に、「義援金配分割合決定委員会」を開き、都道府県間での配分基準を定めるに至りました。同委員会が定めた配分は、「住宅全壊・全焼・流失、死亡、行方不明者は35万円」、「住宅半焼、半壊は18万円」、「原発避難指示・屋内退避指示圏域の世帯は35万円」を基準とし、これに対象世帯・対象者数を乗じた額を各被災都道県に配分することになったものです。

今後は、各都道府県からの申請をもとに都道府県単位で配分され、そこで実際の配分を行いますが、被災人数も極めて多いために、公平性の実現を図るために、基礎調査そのものに時間と手間がかかることが想像できます。このため、義援金が実際に被災者に届くまでどのくらいかかるか、気になるところです。また、家屋損壊の程度の認定を自治体が行うことから、その判定結果を巡って混乱も予想されます。
 
■支援金
支援金は、前述のように、被災者支援のために活動するNGO・NPO等へ寄付されるお金のことを言います。各団体が、この支援金で物資を購入して被災地に届けています。このため、その使い道は、団体によって異なってきます。
 
例えば、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)では、こういった支援金を用いて、被災地の避難所等で「こどもひろば」を開設し、粘土やお絵かき、ボール遊び、トランプなどで遊ぶ場をつくり、子どもたちが子どもらしくいられる時間を取り戻し、被災による影響から立ち直るサポート活動をしています。また、ランドセルや文具セット、衛生用品など、保育所、幼稚園、避難所のニーズに合わせた物品を配布するなどもしています。
 
また、ユニセフの場合は、今回の震災では幼児用下着など支援物資の購入に充てられ、被災地に届けられています。このように、支援金の場合は、送ったお金は、即、支援活動に使われることが多いと言えます。また、子どもや障害者、などに使って欲しい場合は、そういった活動をしている団体に送ることで、より希望に沿った寄付の使われ方になると言えます。
 
■義援金の寄付控除について
(個人が義援金を支払った場合)
個人が、日本赤十字社などに対して支払った義援金は、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。寄付金の金額から2千円引いた金額が所得控除できます(所得金額の40%を限度とする)。
(法人が義援金を支払った場合)
法人が、県の災害対策本部や義援金配分委員会に対して支払った義援金は、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金に算入されます。 
(住民税について)
個人が、東北地方太平洋沖地震に係る義援金を支出した場合は、来年度の住民税について、地方税法第37条の2第1項第1号及び第314条の7第1項第1号に規定する寄附金税額控除(いわゆる「ふるさと納税」)を受けることができます。具体的には、支出した義援金のうち、5,000円を超える部分(ただし、寄附金税額控除が適用される他の寄附金とあわせて、総所得金額等の30%が上限)について、次の「基本控除」と「特例控除」の合計額が控除されます。
・基本控除(平成23年1月1日から12月31日までに支出した額-5,000円)×10%
・特例控除(平成23年1月1日から12月31日までに支出した額-5,000円)×(90%-所得税の限界税率)
 
■支援金寄付の場合の所得控除
〈認定NPOの場合〉
被災者への支援活動を行っているNPO法人に対して義援金を支払った場合、そのNPO法人が国税庁から認定を受けた「認定NPO法人」であり、支払った義援金がその認定NPO法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連するものであるときには、以下のようになります。
 
(個人が支払った場合)
個人が「認定NPO法人に対する寄附金」として支払った場合は「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。つまり、寄付金の金額から2千円引いた金額が所得控除できます(所得金額の40%が限度でしたが、今般の震災では、特例でこれを80%限度となり、高所得者が大口の寄付をしやすくなりました)。
なお、従来は、所得税額を算出する基となる所得から、寄付金額に応じた額を控除する「所得控除」のみでしたが、所得税額そのものから控除する「税額控除」も選択できるように特例で改正されました。
 
(法人が義援金を支払った場合)
法人認定NPOに支払った場合は、「特定公益増進法人に対する寄附金」に含めて損金算入限度額を計算し(特別損金算入限度額)、その範囲内で損金に算入されます。
 
〈認定NPO法人以外の法人等の場合〉
これらに対して義援金を支払った場合には、次に掲げるような支払先の区分に応じて、税務上の取扱いが異なります。
・公益社団法人・公益財団法人の場合:個人は特定寄附金として寄附金控除の対象となり、法人では特定公益増進法人に対する寄附金として、特別損金算入限度額の範囲内で損金に算入できます。
・NPO法人(認定NPO法人以外)、人格のなき社団等:個人としては寄附金控除の対象とならず、法人では一般の寄附金として、損金算入限度額の範囲内でのみ損金に算入できます。
 
■中央共同募金会の「ボランティア・NPO活動支援のための募金」
同会は、今回の震災で、「各県の被災者の生活再建のための義援金」と「地震災害におけるボランティア・NPO活動支援のための募金」との2つの口座を設置しました。財務省は、後者について指定寄付金に指定しました。このため、いずれの口座に対して支払った義援金も「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
この募金は「東北地方太平洋沖地震」と「長野県北部地震」の救援・復興活動を行うボランティア団体やNPOへの支援を目的としたもので、これにより、本募金への寄附は、個人の場合は所得税の寄附金控除対象となり、法人の場合は全額損金算入可能になりました。
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