大阪プライム法律事務所

大阪プライム法律事務所

寄付白書2010

11.02.09 | 非営利・公益

"

昨年末に、日本で初めての『寄付白書2010(Giving Japan 2010)』(日本ファンドレイジング協会編、日本経団連出版 定価2,100円 A5判226頁)が刊行されました。早速、取り寄せて読んでみました。
 

同白書の帯の「日本初 私たちは、今、どこに、いくら寄付しているんだろう?」が示すように、日本社会の個人・法人の寄付の総額や、寄付の動機、分野別の寄付など、日本で初めて寄付の全貌を明らかにしています。欧米に比べて寄付文化が根付いていないと思われていた日本において、これまでの通念を変えさせるようなことも多く含んでいます。・・(写真もしくは「続きを読む」をクリックして本文をお読みください)
 


 

"

"

昨年末に、日本で初めての『寄付白書2010(Giving Japan 2010)』(日本ファンドレイジング協会編、日本経団連出版 定価2,100円 A5判226頁)が刊行されました。早速、取り寄せて読んでみました。

同白書の帯の「日本初 私たちは、今、どこに、いくら寄付しているんだろう?」が示すように、日本社会の個人・法人の寄付の総額や、寄付の動機、分野別の寄付など、日本で初めて寄付の全貌を明らかにしています。欧米に比べて寄付文化が根付いていないと思われていた日本において、これまでの通念を変えさせるようなことも多く含んでいます。

 

特に、目を引いたのは、これまであまり明確ではなかった、宗教・自治体・町内会などへの寄付も含めた個人寄付の全体像や法人による寄付分析でした。これらを合わせた日本全体の年間寄付額は1兆円超(個人寄付5,455億円+法人寄付4,940億円)であるとのことです。

個人寄付(第1章) ここでは個人寄付の調査分析をしています。日本人の年間寄付総額は、5,455億円で、寄付を行った人は3,766万人(日本の15歳以上人口の約34%)との分析が報告されています。なお、会費の総額は3,755億円と推計されていて、会費も活動への寄付の性格を持っていることからして、寄付と会費の総額は9,210億円となります。

これを分野別でみると、宗教関連が2,409億円と全体の44%超とトップで、ついで国際協力662億円(約12%)、国・自治体524億円(約10%)、教育・研究425億円(約8%)、緊急災害支援232億円(約4%)、共同募金188億円(約3%)ということです。

宗教がトップですが、ここにはお布施や謝金は含まれていないとのことで、祭礼への寄付やさい銭は含まれているようです。人々が信心深いともいえるのでしょうが、初詣やお宮参り、七五三などの庶民生活に根差し、家内安全・無病息災という願望による小さいが多くの人々の寄付が、こういった数字に表れているように思います。

教育・研究の分野については、同窓会への寄付や入学時の寄付が含まれていることから大きなシェアになったのかと思います。これ以外にも、コミュニティを通じた寄付など様々な寄付も姿を表わしていて、寄付の全体像が見えてきています。また、遺贈寄付に関心のある人が14.7%いることや、66%の寄付者が、2団体以上に寄付している事実なども紹介されています。

寄付先の対象分野ごとの調査結果もあり、寄付を必要としている団体のファンドレイジング戦略を立てるにあたっても、また企業CSRの活動指針においても、大きなヒントがたくさんあるように思いました。

法人寄付(第2章) 国税庁の税務統計で概要を調べているようですが、2008年の法人の寄付支出額は、4,940億円と推計しています。このうち、指定寄付が1,265億円(約25%)、特定公益増進法人への寄付が700億円(約14%)、その他一般寄付が2,975億円(約60%)で、この構成比率は過去も現在もあまり変化がないとのことです。どういう分野に寄付をしているかを見ると、教育・研究が約30%と最も多く、文化・レクリエーション約24%、環境約13.5%と続いています。

寄付の流れ(第3章) ここでは各種統計における寄付に関する調査を、整理し集約していて、様々な寄付の流れが分かります。自治体(都道府県・市町村)への寄付は約617億円で、一人当たりの自治体への寄付額が最も大きいのは山口県(1,854円)とのことです。学校法人への寄付は2,133億円とのことで、このうち国公立大学等へは818億円でした。

ボランティア(第4章) 日本人のボランティア活動時間は、1カ月平均で12.4時間、活動を行った人の割合は36.1%、これを金銭に換算すると10.5兆円の経済規模になると推計しています。

政策・制度(第5章) 2009年度の3つの大きな変化として、①新公益法人制度の認可・認定が本格化したこと、②「新しい公共」円卓会議がスタートしたこと、③認定NPO法人の要件がさらに緩和されたことがあげられ、これらの動きが解説されています。②に関しては、NPOへの寄付優遇策などの議論が進んだことや、「新しい公共」宣言の中で、国・自治体と市民セクター等との新しい関係性や、「公的年金の投資方針開示の制度化による社会的責任投資を推進することが望まれる」と盛り込まれたことも触れられています。

寄付ニュースクリップ2009(第6章) ここでは2009年のエコポイントや定額給付金の寄付など21の主要トピックが集められています。

課題と展望(第7章) ここでは、「日本においてもっと寄付が進むようになるとよい」と答えた人が約73%である一方で、実際に寄付を行った人は37.6%と、実際の寄付行動につながっていないことや、高齢者の寄付行動に着目して60歳以上の世帯が保有する個人金融資産が約894兆円と推計して、遺産寄付の潜在的大きさに期待していることなどが述べられています。      

今後の白書

日本ファンドレイジング協会では、この白書を、今後も発行し続け、また、英語版も発行するということです。協会の設立に賛同した一員としては、この活動で「寄付」に対する関心が広がり、市民セクターの発展につながっていくことを願っています。

目次
第1章 個人寄付─だれが・なぜ・いくら・どこに
第2章 法人寄付─どんな企業が・どこに・いくら
第3章 寄付の流れ─仲介の仕組みと受け手
第4章 ボランティア─時間と労力を寄付する
第5章 政策・制度─変化の兆しがみえた1年
第6章 寄付ニュースクリップ2009
第7章 課題と展望─寄付のこれからを考える
 

"

TOPへ