大阪プライム法律事務所

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認定NPO法人・公益法人等への大幅な税制改正実現

11.07.16 | 非営利・公益

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平成23年6月22日に、税制改正法が国会で可決成立しました。
この税制改正と、前回お知らせをした6月15日のNPO法大改正とで、認定NPO法人、公益法人、社会福祉法人、学校法人への優遇税制が実現しました。
まず、PST(パブリックサポートテスト)の要件が大きく緩和されました。
また、この要件を満たすことの証明を受けたこれら法人に対し、個人が寄附金を支出した場合には、所得税の「税額控除」が適用できるなどの大きな改正となっています。
また、「日本版プランド・ギビング信託」(特定寄付信託)という制度の創設もなされました。(・・・ぜひ本文もご覧ください。)
 

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(本文)
今回の改正税制法案は、「平成23年度税制改正法案」から一部分を分割し独立した法案として提出されていた法案で、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律(案)」というものでした。この法案は、今国会で成立させるために、「平成23年度税制改正法案」から分離した法案なので、このような変わった名称になりました。6月30日に施行されました。 
この法案自体の主な内容は、期限が到来する租税措置法の期限の延長、認定NPO法人、公益法人等に対する寄付金の寄付金控除、年金を相続した場合の二重課税問題の還付などで、所得税や法人税等の各税の改正も若干含まれています。 
この改正は今年の1月1日にさかのぼって適用され、今回の東日本大震災の支援活動をしている団体への寄付も適用されることになりました。 
 
■新しいPST基準(認定要件の緩和)
パブリック・サポート・テスト要件(PST要件)の判定に当たっては、次の3つの基準を選択適用できることとなりました。
①相対値基準(従来と同じ)
実績判定期間内における総収入に占める寄附の割合が5分の1(20%)以上であること。(※現行の特例「5分の1以上」が本則化されました。)
②絶対値基準(今回の改正事項)←注目!
実績判定期間内の各事業年度中の寄附金の総額が3,000円以上である寄附者の数の合計数が年平均100人以上であること
③条例個別指定基準(今回の改正事項)
都道府県又は市区町村が、個人住民税の寄附金税額控除の対象として条例により個別に指定した特定非営利活動法人であること 
※なお、PST要件で利用できる「小規模法人の特例(一定要件下で、親族合算計算が不要になり、匿名寄付・1000円未満の寄付も寄付金として算入可能になるもの)」を本則化されました。
 
■初回実績判定期間の短縮
今回の改正により、初回の認定申請に限り、実績判定期間は2年とされました。初回の認定申請とは、これまで一度も認定を受けたことがない法人が行う認定申請をいいます。 
実績判定期間とは、3月末が決算期のNPO法人がH23.6.30に申請をしたと仮定した場合を例にして述べますと、以下の通りです。
①初回申請の場合=実績判定期間2年=H21.3.31~H23.3.31
②2回目以降の申請=実績判定期間5年=H18.3.21~H23.3.31
                                                
■絶対値判定方式とは(3000円×100人以上)
PST要件の判定方式に、絶対値方式(年3,000円以上の寄附者数が年平均100人以上)が追加されたことが、今回の改正の注目点です。これによって、分かりやすく言えば、毎年3000円以上の寄付をして頂ける方を100名以上獲得していれば、認定要件をクリアできることになったということです。 
 
■寄附者数の算出に当たっての注意点
・氏名又は名称、住所又は主たる事務所の所在地が明らかな寄附者のみが数えられること。
・寄附者本人と生計を一にする者も含めて一人として数えること。
・寄附者が、そのNPO法人の役員及び役員と生計を一にする者である場合は、これらの者は、寄附者数に含めないこと。 
〈寄附者数のカウント例〉
・寄附者Aが平成21年度に3,000円、平成22年度に3,000円を寄附した場合は、両事業年度について、それぞれ1人としてカウントできます。
・寄附者Aが平成21年度に3,000円の寄附を2回し、平成22年度に寄附をしなかった場合は、平成21年度は1人としてカウントし、平成22年度はカウントできません。
・役員Bが3,000円、そのBと生計を一にしているC(非役員)が3,000円を寄附した場合は、BもCもカウントできません。
・役員と生計を一にしているC(非役員)のみが3,000円を寄附した場合でも、その寄附はカウントできません。
・寄附者Aが1,000円、そのAと生計を一にしているDが2,000円を寄附した場合は、1人としてカウントすることになります。なお、3,000円以上かどうかは合計額で判定します。 
 
■条例個別指定基準とは
(1)今回の改正により、都道府県又は市区町村が、個人住民税の寄附金税額控除の対象として条例により個別に指定したNPO法人については、国税庁長官の認定を受けるに当たって、PST要件を満たすこととされました。(その都道府県又は市区町村の区域内に事務所を有するNPO法人に限る。) 今後、これら条例の制定がなされるものと思います。
なお、PST要件以外の要件については、すべて満たす必要があります。
2)租税特別措置法施行令第39条の23第1項第2号に定める「実績判定期間のおける共益的活動割合が50%未満であること」の要件の判定に当たっては、その対象となる共益的活動から「便益の及ぶ者が地縁に基づく地域に居住する者等である活動」を除いて判定することとなります。 
 
■寄付に対する所得税の「税額控除」制度の創設
この制度は、いわゆるPST(パブリックサポートテスト)要件などを満たすことの証明を受ければ、個人が寄附金を支出した場合に税額控除を適用できるというものです。税額控除方式は認定NPO法人だけでなく、PSTと情報公開の要件を満たす公益社団・財団法人や学校法人、社会福祉法人、更正保護法人にも適用されます。対象となる寄付金は2011年1月1日以後の寄付から遡及適用されます。
今回の改正により、個人が、各年において支出した寄附金で、その寄附金の額が2,000円を超える場合には、寄附金控除(所得控除)との選択により、その超える金額の40%相当額をその年分の所得税額から控除できることとされました。 
税額控除額(所得税額の25%相当額を限度)
=〔対象寄附金の額(総所得金額等の40%を限度)-2,000円〕×40%
(この改正は、平成23年分以後の所得税について適用)
 
これまでは、「所得控除」が認められていましたが、今回の「税額控除」制度では、所得控除に比べてより減税効果が高いため、とりわけ小口の寄附金支出者にとっては有利になり、該当の団体にとっては寄付の拡充が見込まれます。
 
■個人住民税の寄付金控除適用下限額の引き下げ
地方の個人住民税における寄附金控除制度の適用下限額が5000円から2000円に引き下げられ、低額の寄付でも寄附金控除制度を利用できるようになりました。 
 
取戻し課税の導入
認定NPO法人の認定が取り消された場合、みなし寄附金の額の損金算入額の合計額について取戻し課税を行うこととされました。 
 
■日本版プランド・ギビング信託 (特定寄付信託)の創設
もう一つ目新しい制度もできました。「日本版プランド・ギビング信託」(特定寄付信託)という制度です。これは、信託制度(特定寄附信託)を活用して、資産を公益法人や認定NPO法人等へ寄附する場合、その信託財産から生じる利子所得を非課税とする優遇措置制度です。信託銀行などに預けた財産から生じる利子所得が非課税になり、寄付控除による寄付創出効果が加速するものと期待されます。 
プランド・ギビング(Planned Giving)というのは、寄付者が、遺言を含めて自分の人生を通じた「計画的な寄付」をすることをさします。米国で、信託制度を活用した寄付が進みやすくする仕組みとして発達しました。米国の場合、信託残高が約1285億ドル(約12兆円)に至っていると言われています。日本でも、これまで税制上の制限からプランド・ギビング型の信託の設計はできなかったために、「新しい公共」円卓会議で創設の方向性が出され、今回の「日本版プランドギビング信託が生まれたものです。 
認定NPO法人の要件緩和と寄付控除の拡大に加えて、新しく生まれた「日本版プランド・ギビング信託」で、寄付文化は大きく変わっていけばと思います。
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