社会保険労務士法人アルコ

産業医について

17.08.01 | 日々頑張るスタッフブログ

先日新聞を読んでいると政府が過重労働対策として2019年度より産業医の権限を強化する関係法案を今秋の臨時国会に提出する、という記事が目に入りました。
記事では企業に対して、過重労働を抑えるためにとった対策を産業医に報告するよう義務付けることや、産業医との契約を打ち切る場合にはその理由を労働組合に知らせる事で選任した産業医を簡単に解任できない仕組みを設けるとありました。そこで今回は産業医の職務内容や選任の条件について簡単に説明しようと思います。

産業医の役割
 まず産業医とは、事業所の労働者の健康管理等を行わせるために選任する医師の事を言います。主な業務内容としては
①健康診断や心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施及び長時間労働者への面接指導等の労働者の健康管理。
②労働者の健康管理について事業者等に勧告、指導、助言をすること。
③毎月1回以上の作業場の巡視を通じて、労働者の健康障害を防止する措置を講ずること、が挙げられます。

産業医の選任要件
 従業員を常時50人以上使用するすべての事業場には産業医の選任義務があります。
また常時1000人以上の労働者を使用する規模の大きな事業場や、坑内業務等の有害業務に常時500人以上の労働者を使用する事業場では、その事業場専属の産業医を選任する必要があり、常時3000人を越える労働者を使用する事業場では2人以上の産業医を選任する必要があります。同時に事業主には産業医を選任した場合に所轄労働基準監督署長に選任報告書を提出する報告義務が課せられます。

産業医制度の課題
 このように事業場で働く労働者の健康管理を担う産業医ですが実際には産業医との面接指導で健康問題を抱えていると判断され自分の評価に支障が出ることを恐れる従業員が面接指導において本音を話さない場合や、2015年に新設されたストレスチェック制度により産業医の負担が増大し、メンタルヘルスの専門医に外部委託せざるを得ない等の問題点も挙げられています。
大企業を除く事業場では嘱託・非常勤の産業医が多く毎月一回以上の巡視だけでは実態の把握が難しく、きちんと業務を全うしたくてもなかなか叶わない産業医も多く、今回の産業医の権限強化は、事業者と産業医の結びつきを強めることで産業医の効果を高める狙いがあると考えられます。

相良 晋太郎

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