社会保険労務士法人アルコ

年金の支給漏れと振替加算について

17.09.20 | 事務所通信

9月14日付の日本経済新聞の記事で、厚生労働省がシステムの不備や事務処理のミス等により、10万6千人に対して約598億円の年金の支給漏れがあったと発表した記事がありました。記事によると、「振替加算」と呼ばれる部分の年金に支給漏れがあったと書かれており、未払い分は11月中に全額を支給すると書かれていました。
今回はこの「振替加算」について、支給対象者や支給金額等について説明させていただこうと思います。

振替加算とは何か?
昭和61年4月1日に施行された新年金制度により、全国民が国民年金の対象者となりました。厚生年金の被保険者(第2号被保険者)のみならずその配偶者も被保険者(第3号被保険者)となったのです。これにより第3号被保険者も65歳になると国民年金の老齢基礎年金を受給出来るようになりましたが、同時に配偶者の厚生年金被保険者に支給されていた加給年金(配偶者の扶養手当のようなものです)が支給停止されることとなりました。ところが昭和61年度以前の年金制度では、第3号被保険者に当る人達は、年金制度への加入が任意となっており、65歳になっても被保険者期間がなく、年金が貰えないケースが多く生じました。このため一定の要件を満たした第3号被保険者には所定の額にその者の生年月日に応じた一定の率を乗じて得た額を老齢基礎年金額に加算する制度が設けられました。
第2号被保険者に支給されていた加給年金を、その配偶者の老齢基礎年金に振り替えることから、これを「振替加算」と言います。

振替加算の支給要件・支給金額等
まず振替加算の対象者となるには「大正15年4月2日~昭和41年4月1日」の間に生まれた老齢基礎年金の受給権者であり、以下の条件のいずれかに当てはまる配偶者によって65歳以後生計を維持されている事が条件となります。
条件1:老齢厚生年金(被保険者期間240月以上)等の受給権者
条件2:障害厚生年金(同一の支給事由に基づく障害基礎年金の受給権を持つ者に限る)等の受給権者
 
 次に振替加算の支給額についてですが、振替加算の額は224,700円×年金改定率(H29年度は0.998)に受給権者の生年月日に応じて政令で定める率(1.000~0.067)を乗じた額が支給されます。ただし、振替加算はあくまで65歳以降に十分な年金額を得られない老齢基礎年金被保険者を対象としているため、以下の老齢基礎年金の受給権者には支給調整が行われます。

条件1:受給権者が被保険者期間240月以上である老齢厚生年金等を受けることが出来る場合は、振替加算は行われない
条件2:受給権者が障害基礎年金、障害厚生年金等の支給を受ける事が出来る場合には、振替加算の支給がその間支給停止となる

未支給の振替加算額について
以上が老齢基礎年金の振替加算額についての概要となります。記事によると今回発覚した不支給額は一人当たり平均で約56万円に上り、最高で20年以上もの長い間未払いの状態が続いていた人もいたとのことです。未払いの判明した人には日本年金機構が通知書を送り、11月に未払い分を一括で支給し、すでに対象者が死亡されている場合には年金の未払い分を受け取る権利のある遺族に支給されるとのことです。振替加算の対象者か又は振替加算分の支給額が未支給になっていないか、これを機にねんきん定期便等を参考にして、見直してみるのも良いかもしれませんね 。

                                                        相良 晋太郎

 

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