社会保険労務士法人アルコ

特定労働者派遣事業の廃止について

17.12.04 | 事務所通信

11月20日の日経新聞の記事で、2018年9月限りで、特定労働者派遣事業所が廃止され、企業の対応についての記事が掲載されていました。今回は、特定労働者派遣事業についての説明と、特定労働者派遣事業が廃止される経緯について、簡単に説明させていただきます。

1, 特定労働者派遣事業とは?
 それまで、労働者派遣事業には、労働者が事前に派遣会社(派遣元)に登録して、派遣先の企業と、派遣元の企業の間に労働者派遣契約が締結された際に、労働者を派遣先の指揮命令下で働かせる一般労働者派遣と、自社が常時雇用している労働者を、相手先企業との契約により派遣する、特定労働者派遣がありました。特定労働者派遣は労働者の常時雇用が条件となっており、労働者の雇用や暮らしが安定すると考えられ、一般派遣に比べて簡便な届け出のみで、労働者を派遣することができ、一時労働者派遣の約8割を占めていました。

2, 2015年の労働者派遣法改正
 ところが、常時雇用労働者の派遣が条件にも関わらず、契約社員等の常用性の含みを持たせた名称で非常勤労働者を派遣し、派遣契約の終了と同時に、労働者が解雇されてしまうというケースが見られたため、2015年の労働者派遣法の改正時に、特定労働者派遣が事実上廃止されました。
労働者派遣事業は、一般労働者派遣に一本化されることとなり、特定労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業への移行の為の経過措置として、2018年9月29日までの時限許可とされました。 

3, 特定労働者派遣の移行について
特定労働者派遣を行っている企業は、2018年9月29日までに、一般労働者派遣事業への移行が求められています。しかしながら、多くの事業は一般労働者派遣へ移行せず、派遣事業を廃業するケースが多いようです。主な理由として、一般労働者派遣への移行には、厚生労働大臣による、運営許可の認可が必要になりますが、その認可基準が以下のようにハードルの高い条件であり、これを満たすことが困難である点が考えられます。

1, 20平方メートル以上の事務所があること
2, 資産から負債を引いた基準資産が2000万円×事業所数以上
3, 1500万円×事業所数以上の現金預金がある・・・等
※小規模派遣事業者に対しては、暫定的な配慮措置があります。

中小企業ではこれらの条件を満たすのは難しい上、2015年の法改正により、派遣労働者に対するキャリア形成支援制度の義務づけが新たな条件として盛り込まれました。こうしたことも、一般労働者派遣の許可を得ることなく、特定労働者派遣事業の廃業を選ぶケースが多い理由となっています。

 以上、特定労働者派遣事業の廃止について、簡単ながら説明させていただきました。
元々、常用雇用労働者を派遣することで、派遣労働者の雇用の安定を目的としていた同制度。これまで多くの議論が繰り広げられてきましたが、法改正により、ついに許可制の一般労働者派遣事業に一本化されることとなりました。
労働者派遣事業に与える影響は大きく、各企業には2018年9月の期限までに、事業の移行や廃止等、対応の決断が迫られています。
                            
相良 晋太郎

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