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国民年金受給開始年齢について(第一弾:支給の繰り上げ)

18.02.21 | 事務所通信

日本経済新聞の記事で、政府が国民年金の受給開始年齢について、受給者の選択で受給開始年齢を、70歳以降に選択可能とする制度の検討に入ったとの記事がありました。
現行の国民年金制度では、老齢基礎年金の受給開始年齢を60歳~70歳の間で選択する事ができ、受給開始年齢によって受け取れる年金額が変動する仕組みとなっています。そこで新聞記事の解説として、今回と次回の2回に分けて、国民年金の老齢基礎年金の受給開始年齢について、簡単にご説明させていただきたいと思います。

1,老齢基礎年金の支給開始年齢の繰り上げ
 今回のメールマガジンの記事では、老齢基礎年金の受給開始年齢を65歳より前にした場合について説明させていただきます。老齢基礎年金は原則として、保険料納付済期間・保険料免除期間(未手続の滞納期間を除く)・合算対象期間(いわゆるカラ期間)の合計が、10年以上ある者(受給資格期間)※が65歳に達した際に支給されますが、60歳~65歳の間に受給資格期間を満たした場合は、65歳に達する前に厚生労働大臣に老齢基礎年金の支給繰り上げの請求をする事が出来ます。老齢基礎年金の支給を繰り上げた場合は、その請求をした日の属する月の翌月から、老齢基礎年金の支給が開始されます。

※平成29年8月1日以降は、従前の25年から10年に短縮されました。

2,支給開始年齢繰り上げによる年金額の変動及び制約
老齢基礎年金の支給繰り上げをした場合、その支給額は本来支給される年金額に減額率(以下計算式参照)を乗じた額が減額されます。
減額率=繰り上げ請求月~65歳到達月の前月までの月数×0.005
例えば、60歳に繰り上げ請求をした場合は、65歳到達月の前月までは60月(12月×5年)となるため、減額率は60×0.005=30%となり、支給額は65歳に受給を開始した場合より30%減額された額を、60歳から支給されることとなります。また支給額の繰り上げをした場合は以下の制約を受けることとなります。

① 裁定の取り消しや変更は出来ず、1度繰り上げ請求した場合、一生減額された年金額を受け取る。
② 国民年金の任意加入被保険者になれなくなる。
③ 一部の障害基礎年金が受給出来なくなる。
④ 寡婦年金が受給できず、寡婦年金の受給権を有していた場合は、その受給権が消滅する。

以上、老齢基礎年金の受給開始年齢の繰り上げについて、簡単に説明させていただきました。本来65歳到達時から貰える老齢基礎年金が、前倒しで最短60歳から受給することが出来るようになり、早期に資金が必要な方にとっては、有効な制度と考えられます。しかしながらその反面、一度受給してしまうと、減額された年金額を一生受給することとなるほか、他の年金が受給出来なくなる場合もあるため、支給繰り上げの請求手続きは慎重に行う必要があると言えます。
 次回のメールマガジンでは、これに関係して、老齢基礎年金の受開始年齢を繰り下げた場合について説明していきたいと思います。

相良 晋太郎

 

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