インプラントの予後
14.04.06 | 業種別【歯科医業】
NHKの報道や週刊誌のさまざまな
「インプラントバッシング」によって、
急速に冷え込んだ感のある日本のインプラント。
私が編集長を務める歯科雑誌『アポロニア21』は、
いわゆる「インプラントバブル」の時期から
インプラントに対して
慎重な編集方針を採ってきた経緯があります。
歯科業界誌編集長の手記
理由は、対合歯を痛める、
インプラント周囲で生体の内部と
外部を交通させる「傷」を
半永久的に作るといったものです。
最近、インプラントが入ったまま認知症が進行したり、
寝たきりになったりした高齢者が次第に増えてきています。
認知症の場合、歯やインプラントの周囲を清掃する
メインテナンスはかなり困難になります。
そのため、これらの人々のむし歯予防のために、
フッ素洗口を実施している病院・施設もあります。
しかし、1999年に九州大学の研究チームが、
インプラントのチタンが腐食(溶出)する環境条件として、
インプラント埋入部位の低溶存酸素濃度、酸性環境、
フッ素、異種金属の存在を挙げました。
低溶存酸素濃度は、2000年頃から本格的に普及した
粗面加工のインプラントでは当然起こりうるリスクで、
酸性環境は口腔衛生環境が劣化すれば容易に発生します。
異種金属は、当のインプラント周囲炎
(放置すると敗血症で死亡のリスクも)
予防のために行われるメインテナンスの器具によって
インプラントに付着します。
最大の問題はフッ素で、
天然歯とインプラントが並存している環境では、
高齢者の唾液流量低下にともない発生しやすくなる
天然歯の根面う蝕を予防するために行われるフッ素洗口や、
若い人にとっても、メインテナンスで使用される高濃度フッ素が、
チタンの生体内への溶出に関与する可能性があるということです。
チタン溶出は、インプラント周囲炎を発症、増悪させますし、
思わぬ金属アレルギーなどを引き起こす可能性もあります。
2008年を境に、
先進諸国ではインプラント需要は減少してきていますが、
現在もなお、欠損補綴で優先的に選択されるオプションのひとつです。
インプラントは医院経営にとって
高付加価値でテクニカルセンシティビティ(術者による予後の差)が
少ないというメリットがありますが、
相応のリスクもあるのだという認識も必要だと考えています。
【記事提供元】
月刊アポロニア21(日本歯科新聞社)
編集長:水谷惟紗久
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